東京経済大学コミュニケーション学部では、2027年度より「国際観光プログラム」を開始する。少人数を選抜して行う学部生限定プログラムだ。なぜ、コミュニケーション学部は「観光」に注目したプログラムを新たに設立したのだろうか。国際観光プログラムの狙いや特色について、コミュニケーション学部の中村忠司教授に聞いた。

 

キーワードは「英語×観光」。観光産業の中核人材の育成をめざして

 国際観光プログラムは、コミュニケーション学部が従来の1学科制から、メディア社会学科と国際コミュニケーション学科の2学科制に移行したことを機に、計画が始まった。同学部には1学科制の頃から「PRプロフェッショナルプログラム」というPRプランナー補や社会調査士といった難関資格取得をめざすアドバンストプログラムがあるが、どちらかといえばメディア社会学科の専門領域に近かった。

「主に国際コミュニケーション学科の専門領域で選抜型のプログラムを作ろうと、2024年度から本格的に検討が始まりました。その結果、新設されることになったのが国際観光プログラムです。2年生以上の学生20名を選抜し、観光業界をリードするための力を育みます」

 国際観光プログラムのキーワードは「英語×観光」。「英語」については、独自の英語科目や海外研修プログラムを有している国際コミュニケーション学科の特色を反映しているといえよう。しかしなぜ「観光」が選ばれたのか。中村教授は社会の変化や将来を見据え、観光の専門人材育成が重要だと考えていた。

「観光は日本の主要輸出産業の2位で、2025年の訪日外国人旅行者は4268万人にのぼります。旅行客はさまざまな場面で消費をするため、ありとあらゆる産業が観光と無関係ではいられなくなりました。日本は今後も積極的に観光事業に取り組んでいく姿勢を見せています。一方で、オーバーツーリズムなど、観光の負の側面も浮き彫りになりました。持続可能な観光に対応できる人材を育てるためにも“英語×観光”を軸にしたプログラムを新設します」

 観光に関わる人材というと、ホテルのフロントスタッフや航空機のキャビンアテンダントなど、実務に携わる人をイメージするかもしれない。しかし国際観光プログラムでとくに力を入れて育成するのは、経営と実務の現場をつなぐ「中核人材」だ。

「高付加価値がある持続可能な観光産業を実現するためには、実務人材のマネジメントを行いつつ、組織内のリーダーとして、経営層が打ち出すビジョンとミッションを実現できる中核人材が必要です。もちろん大学卒業後にいきなり中核人材になれるわけではありません。しかし実務に留まらず、経営やマネジメントに参加できる人をめざしてほしいと考えており、そのためにも国際観光プログラムでは“アイデアを形にできる人”を育てていきたいと思っています」

JAL社員も講師として参加!国際観光プログラムの特別講義

 観光を担う中核人材を育成するために、国際観光プログラムは3つの長所を備えている。1つ目はプログラム生限定の特別講義だ。2つ目は英語力アップや異文化理解、観光事業戦略、組織マネジメントなどにつながる既存6授業との連携。ピックアップされた授業のなかから最低でも10単位分を履修する。そして3つ目は資格取得の支援だ。総合旅行業務取扱管理者と国内旅行業務取扱管理者の国家資格試験受験料、そしてTOEIC・IPの受験料(年2回×3年分)を大学が負担する。

 特筆すべきはプログラム生限定の特別講義だろう。「国際観光ワークショップa/b」の2科目が用意されている。国際観光ワークショップaはJALと連携したPBL形式の授業。地域活性化につながる観光振興策を考え、プレゼンテーションを行う。対象地域やテーマは、学生自身が考えて決定。調査や発表、フィードバックの反映をくり返し、最終発表に向けて内容を磨き上げていく。

 国際観光ワークショップbでは、外資系ホテル、国際クルーズ運営会社、インバウンドに特化した専門旅行会社、行政や地域の観光推進組織など、観光の第一線で働く人々が、ゲスト講師として参加する。現場で培った「生きた知見」を学生たちに教えていく予定だ。

「国際観光ワークショップa/bの特徴は、ゲスト講義だけではありません。まず教員が持続可能な観光に関する学術的な理論をしっかりと教えます。理論と現場の知見をどちらも学ぶことで、学生は課題解決の力を身につけます」

 2027年度からのプログラム開始に先駆け、国際観光ワークショップa/bは2026年度にトライアルが実施されている。2026年度前期に行われた国際観光ワークショップaの様子から、中村教授は早くも手応えを感じたという。

「国際観光ワークショップaは非常にいい形で行われていると感じました。学生はさまざまなアイデアを持っていますが、そのままでは実現させることが難しく、JALの講師が、現場の目線で細部にわたり指導していたのが印象的でしたね。財源はどうなっているのか、人材確保などの運用面はどうか、環境に悪影響はないかなど、学生と本気で向き合い伴走型の丁寧なサポートをしていました。

 学生からも、参加してよかった、という声が多く聞くことができました。国際観光ワークショップaを一度経験すると、物事を深く考える癖が身につくので、この力はほかの授業やゼミでも活きてくるはずです」

 国際観光ワークショップbは、2026年度後期にトライアルを実施する。

「講師によって授業の進め方には違いが出てくると思いますが、学生との対話の時間を多く設けてもらう予定です。観光の第一線で活躍されている方々を講師に迎え、これからの国際観光の未来を多角的に思考させる、極めて先鋭的な内容をめざしています。」

すべての趣味は観光につながる。より幅広く、深く学ぶために

 観光系学部ではなく、コミュニケーション学部で観光を学ぶことには大きな利点がある。メディア社会学科と国際コミュニケーション学科で学ぶ専門領域は、どちらも観光との親和性が高いからだ。

「英語や異文化理解はもちろん、メディアも観光と深い関わりがあります。観光をしたい人と、観光客を呼びたい地域をつないでいるのは、交通や情報といった『観光媒体』です。近年はSNSなどをきっかけに観光動機が生まれることも珍しくありません。メディア社会学科の授業ではSNSなどのメディアも学べますし、今年度からは生成AI分野の特別招聘教授も迎え入れました。英語もメディアも学んで観光に活かす。それができるのがコミュニケーション学部の国際観光プログラムです」

 国際観光プログラムを通して、「観光を表面的ではなく、より深く、幅広く考えられるようになってほしい」と中村教授は期待を寄せる。そして卒業後は実務人材だけでなく、営業などの「アイデアを形にしてビジネスにつなげる仕事」でも活躍してほしいと語った。

「従来型の観光のイメージではなく、もっと幅広い観光があるのだと知るためにも、ぜひ本プログラムに参加してもらいたいですね。アニメ、スポーツ、食など、あらゆる要素が観光と結びつくことを知ることでしょう。“自分の趣味を観光につなげてビジネスにしていこう”と思った方は、ぜひ本学で“観光”を学び、ともに研究を深めましょう。

 また、社会課題に当事者意識を持てる学生にも参加してもらいたいと思います。積極的に物事に関わり、主体的に進めたいと考える学生にも本プログラムはおススメです。授業を自分のキャリア形成に活かすぞ、というガツガツした気持ちも持っていてほしいですね」

東京経済大学 コミュニケーション学部

中村 忠司教授

 

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