第11回PDA高校生即興型英語ディベート全国大会は、12月23、24日の2日間、東大駒場キャンパス内の生産技術研究所(コンベンションホール他)で、全国から過去最多となる100校、約300名(一部オンライン参加を含む)の生徒が参加して開催された。神奈川県の聖光学院高等学校が2度目の優勝を飾り、2位は福井県立藤島高等学校だった。大会の主催は一般社団法人パーラメンタリーディベート人財育成協会(PDA)(代表:中川智皓 大阪公立大学准教授)、共催は東京大学生産技術研究所、大阪公立大学、後援は文部科学省、全国高等学校校長会等。
優勝した神奈川県、聖光学院高等学校
大会概要と結果
大会は、PDAが定めたルールやマニュアルに則って、1チーム3名からなる学校代表チーム※がトーナメント方式で順位を競う。初日が予選で4回戦まで、2日目に準々決勝、準決勝、決勝が行われる。また今大会では、過去最多の参加校となったことを受け、予選9位から16位のチームによるランダムマッチも実施。また会場や出場校の都合から、オンラインも併用された。
第11回全国大会での〈授業導入優秀賞〉は以下の3校。
・ 徳島県立城ノ内中等教育学校
・ 山形県立東桜学館高等学校
・ 千葉県立船橋高等学校
※1校1チーム。なお、以下の生徒は1チーム1人以下に制限されている。英語を第1言語、第2言語とする国で2年以上滞在経験のある生徒(就学前は不問)、インターナショナルスクールまたはそれに相当する学校に2年以上通学経験のある生徒、家庭または学校で常用的に英語を使っている生徒。
大会結果(上位16位までの学校)は表の通り
準優勝は福井県立藤島高等学校
大会の形式、競技の進め方
1ラウンドは50分で完結する形式。最初に論題と肯定・否定の役割が示され、各チームは15分間で立論や対戦相手の質問も想定した議論の展開について作戦会議を行う。なお、立論の根拠となるポイントは2つと決められている。また1チームの3名は、以下の組み合わせ表に基づいて、1名が3つの役割から一つを受け持つ。
対戦時間は20分。各チームの3名は、順番に従って正面の演壇に移動し、一般聴衆に見立てたジャッジに向かってアピールする、また、論戦は以下の流れで行われる。
まず肯定側が、首相(PM)が論題を定義し肯定ポイントを2つ挙げ、肯定ポイントの1を説明する。次に否定側Oppositionの代表(LO)が否定側の方針を確認し、肯定ポイント1への反論を展開、否定ポイントの1,2を確認した後、その1について具体的に説明する。続いて肯定チームの2番手、MGが否定ポイント1に反論し、肯定ポイント1の立て直しを図るとともに、肯定ポイント2について具体的に説明する。次にそれを受けた否定側のメンバー(MO)が、肯定ポイント1と肯定ポイント2への反論を展開するとともに、否定ポイント1を立て直し、否定ポイント2について説明する。それに続いて否定チームのまとめ役(LOR)が、否定側の方針を確認し、それまでのディベートを総括し、否定側の意見が優れている理由を述べ結論を出す。そして最後は、肯定チームのまとめ役(PMR)が、否定ポイント2に反論し全体をまとめ、自分たちの議論の優れている理由をアピールし結論を出す。
この間わずか20分。一人の持ち時間は約2~3分程度、しかもこの間に15秒以内だが、POI(Point of Information)と呼ばれる相手チームから出される質問やコメントも予想されることから(拒否は可能)、持ち時間はさらに短くなり、事前に用意したメモに目を通すのも惜しまれる。
最後の15分は、ジャッジによる判定結果と講評に充てられる。
判定は、「主張の理由」「具体例」「論題との関連性」「スピーカーの役割・戦略性」などの〈内容〉と、「態度・話す姿勢」「アイコンタクト・ジェスチャー」「明瞭性」「タイムマネジメント」といった〈表現〉の、2つの側面から、各項目を点数化して行われる。
対戦時間が50分の理由
教育現場で即興型ディベートは、世界各地で盛んに活用されており、その形態や運営組織は様々とされる。
こうした中でPDAの一つの大きな特徴は、公教育での活用を当初から念頭に置いて制度設計されている点。50分で完結すれば英語の授業やそれ以外の授業にも取り入れやすい。さらに2022年度からは、高等学校の英語科新科目「論理・表現Ⅰ、Ⅱ、Ⅲ」におけるディベート活動でも実施できる形態に合わせてある。
この展開が功を奏し、PDAの即興型ディベートはわずか十年で、中学校も含めて国内1,000校以上で実践事例を積み上げてきた。
またこうした趣旨から、全国大会以外にも神奈川県公立高等学校即興型英語ディベート交流大会、首都圏即興型英語ディベート大会のような交流大会も開催されている。
【用語解説】PDA、即興型英語ディベートって?
英国議会(Parliament)の形式に由来することから名付けられたもので、一つの論題に対して賛成・反対に分かれて論戦を展開する点は一般的に知られる教育ディべートと同じだが、論題と立場が競技直前に決められる点と、一般的なディベートのように相手を言い負かすのではなく、自分の考えを見直し、よりよい判断を下せるための手段とすることを目的にし、議論の内容だけでなく伝達方法や議論方法などを含んで審査される点が異なる。
主催の一般社団法人パーラメンタリーディベート人財育成協会(PDA)は2014年に、(一社)日本英語交流連盟などの協力の下、読み書きそろばんと同じように、パーラメンタリーディベートが学習手法の一つとして受け入れられる社会になることを目指して設立されたもので、パーラメンタリーディベートを通じて英語での発信力、論理的思考力、幅広い知識、プレゼンテーション力、コミュニケーション力など、複数のスキルを育み、グローバル社会で貢献できる人材の育成に寄与することを目的とする。
ジャッジってどんな人?
PDAが認定する「認定教育ジャッジ」の有資格者も多い。多くは各チームを引率、指導する教員や社会人などから選ばれる。大会2日目の最初には、「ジャッジブレーク」と呼ばれる参加生徒によるジャッジの評価が行われる。これは、「ジャッジのコメントにはどの程度納得できたか」「それによって次への学習意欲がどの程度高まったか」という2つの観点から生徒が内容、表現それぞれについてジャッジを5段階で評価するもので、平均点の高かった40名が発表され、その中から上位に選ばれた者が、決勝トーナメントのジャッジを務める。
論題にはどんなテーマが?
主に時事問題や今日的な社会課題、それに高校生の日常に身近なテーマが選ばれる。英語力だけでなく、日頃、社会や社会問題、身近な学校生活における問題に敏感で、その解決について考えていることも勝敗に影響を与える。

