「食により人間の健康の維持・改善を図る」という建学の精神を掲げ、栄養学を生活に活かす「実践栄養学」の教育・研究に取り組んできた女子栄養大学。2026年度に共学化、校名を日本栄養大学へと改称し、日本の栄養学を牽引する教育機関として、さらに開かれた大学を目指す。

 

共学化によって栄養学がさらに社会に浸透する

 「男女が共に学ぶことで、社会の中にもっと栄養学で学んだことを活かすという可能性が広がると思っています」と話すのは、日本栄養大学・武見ゆかり副学長。

 2026年4月、女子栄養大学・女子栄養大学短期大学部は、性別・年齢・地域・人種といった枠を超え、日本における栄養学の発信地として、共学の「日本栄養大学・日本栄養大学短期大学部」へと生まれ変わった。

 開学以来、学園創立者である香川綾の「食は生命(いのち)なり」という考え方を原点に、「食により人間の健康の維持・改善を図る」という建学の精神のもと、病気の発症予防と重症化予防をめざして、食と健康をテーマに女子への栄養学教育の研究と実践に取り組んできた。管理栄養士国家試験の合格率も長年全国トップクラスを誇る。

学んだことが生活の役に立つ栄養学は伸びしろの多い学問

 武見副学長の「栄養学は、実学」という言葉が印象深い。

 「その日に習ったことが、すぐ活かせる。家に帰るとすぐ役に立つ。栄養学を学び始めたとき、これほど役に立つ面白い学問はないと思いました」と自身の経験を振り返る。

 同時に、食や健康に関わる栄養学の大切なことが、自分も含め多くの人々に全然伝わっていないと感じ、「そうだとしたら、その社会の仕組みを変えなければいけない、そのためにはどうすればいいのか、それを知るためにもっと勉強しなければ」と大学院へ進んだ。

「栄養学は、文理融合で非常に学際的です。複雑なものごとを分解して理解を深めていこうとする要素還元型のサイエンスであると同時に、生活に関わる様々な要素が複雑に絡む統合型ならではの、選択肢の多い、発展の可能性を秘めた学問だとも言えます」

 一口に栄養学と言っても、本当に多様な視点からのアプローチがある。人のからだの仕組みについて知ること、食品の栄養素はもちろん、食物の生産、加工食品などのフードシステム、また「食べる」ということをどう日常生活につなげるかといった方法論や行動科学、食環境づくりや栄養教育、保育園や幼稚園、学校、病院、企業など様々な分野での給食、ライフステージにおける食事や栄養、フードシステムの過程で排出される温室効果ガスなどは地球環境にも関係する。他にも書ききれないほど、栄養学は私たちの生活に密接に関わっており、「栄養学を学ぶには、多様なアプローチが必要であり、本学はその学びに対応し得る環境を整えています」との話に、長年、栄養学の研究に専心し、「栄養」を冠する大学としてこれまでやってきた実績への自負がうかがわれた。

 人々は、健康のためだけに食事をしているのではない。食事は、生活の楽しみであり、人とのコミュニケーションの手段でもある。食べ方や求めるものも多様化し、生活に対する価値観も人それぞれだ。医学の進歩によって体のいろいろな状態もわかるようにもなった。そして、美味しいという良質な食体験が健康に寄与することや食事として口から食べて栄養を摂ることの重要性も研究によって明らかになっている。栄養学は、日々のくらしで実践されてこそ価値があるという創立者の考えに基づき調理学にも力を入れ、知識だけでなく実践して栄養学を身につけていく。

「それらの要素を全て考慮しながら、食事や生活、環境などがどうあるべきかを提案したり、商品開発、アプリ開発など、栄養学がやれることは、今までやってきたこと以上に、まだまだたくさんあります」
開設当時の調理実習風景。誰もが栄養学を学びやすい環境を整えるために、栄養学の知識や実践を広める教育に尽力。

人生100年時代だからこそ注目される日本の栄養学

 近年、日本栄養大学大学院では毎年アジアからの留学生を受け入れている。なぜ、彼らは日本で栄養学を学ぶのか。その理由を尋ねた。

「一つには、日本人が健康、長寿である一因が食生活にあると考えられており、日本はなぜそうなっているのか、日本の栄養学を学び、自国の発展に役立てたいというアジア諸国の留学生が増えています。もちろん、進んだ栄養学を学ぶのであれば、欧米にも長寿国はありますが、お米を主食とする食文化が似ていることが大きな要因として考えられます」

 また、特定保健用食品(トクホ)など、社会経済的に日本の食品産業に関する興味も大きいという。「総合的に栄養学(Nutrition)を学びたいという学生が、本学を選んでくれている」と、現状を分析する。

「日本でも世界においても、栄養学を修めた人材はまだまだ足りません。その意味においても国内だけにとどまらず、私たちが栄養学に取り組み、果たすべき役割は大きいと考えています」

学生の可能性も引き出し新しい未来をつくっていく栄養学

 最後に、栄養学に向いている人はどんな人かという質問に対して「人が好き。食べることが好き。食べ物に興味がある。これらは、やっぱり前提として必要かなとは思います。健康にも食べ物にも興味があるというなら、栄養学は、学びの選択肢の一つになるのではないでしょうか。それから、もう一つ。食を通して人の生活をより良くしたい。何か新しい未来をつくっていきたい、クリエイティブな仕事がしたいと思っている人にも向いてる領域だと思います。可能性がいっぱいありますから。ですから、私たちはさらに栄養学を深化させて、栄養学を未来にもっともっと活かせるようにしていきたいと考えています」という答えが返ってきた。

 生きている限り、栄養を摂らない、食べないという人はいない。栄養学は、様々なかたちで人々の生活に関わっているからこそ、学問としての複雑さと面白さ、そして大きな可能性を秘めている。

日本栄養大学

武見ゆかり 副学長

1981年 慶應義塾大学 文学部文学科フランス文学専攻 卒業
1986年 香川栄養専門学校栄養士科 卒業
1988年 女子栄養大学大学院栄養学研究科 栄養学専攻修士課程修了 修士
1997年 女子栄養大学 博士
2005年 女子栄養大学 栄養学部 教授
( 現:日本栄養大学)

 

日本栄養大学

栄養学の実践を極め、食・栄養・健康のスペシャリストへ

日本栄養大学は、建学の精神「食により人間の健康の維持・改善を図る」のもと、理論を実践的なものとして実できる多彩な「食」のスペシャリストをめざし、多くの管理栄養士、栄養士、臨床検査技師、養護教諭、家庭科教諭、栄養教諭など人々の健康を支える人材を育成。食と健康をテ[…]

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