京都大学霊長類研究所の香田啓貴助教と中部大学創発学術院の松田一希准教授をはじめとした研究グループは、テングザルの生態・形態データを10年以上蓄積し、「大きな鼻は性選択に有利」という進化のシナリオを霊長類で初めて実証的に示した。

 進化論を唱えたダーウィンによると、雄の派手で装飾的な形態は、雌をめぐる雄の争いの性選択によって進化したと考えられている。また、ハーレム型の群れを形成するなど複雑な社会関係が存在する霊長類社会では、雄の派手な形態装飾が顕著になりやすいともいわれている。

 同グループは、マレーシアに生息する野生テングザルの雄の鼻の形態と他の計測部位との相関関係を検討した。その結果、雄の鼻のサイズと体重、睾丸容量は正の相関関係を示した。また、雄の鼻のサイズと各ハーレムに所属している雌の数との相関関係を検討したところ、ハーレム内の雌の数は、大きな鼻を持っている雄ほど多いことが明らかになった。さらに、国内外の動物園から収集したテングザル雄の音声データと雄の形態との相関を調べたところ、雄の声の低さは、肉体的な強さ(体格の大きさ)や、高い繁殖能力(睾丸の大きさ)を示しており、雌を魅了するための大きな武器となっている可能性を示すことに成功した。

 本研究は、「男らしさ」を加速化させる進化のシナリオを実証的に提案した霊長類で初めての成果といえる。

論文情報:【Science Advances】Nasalization by Nasalis larvatus: Larger noses audiovisually advertise conspecifics in proboscis monkeys

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