東京科学大学と東北大学の研究により、高齢者の歯の治療に対する支払い意欲に最も影響するのは「抑うつ症状の有無」、支払い意欲金額の決定に最も影響するのは「資産」であることがわかった。
歯科治療に対する支払い意欲は、個人が歯の健康をどの程度重視しているかを示す指標とされている。これまでの研究では、収入が高いほど支払い意欲が高いことが報告されているが、高齢者において経済状況・生活習慣・健康状態・社会的つながりなど多様な要因を総合的に検討した研究は十分ではなかった。
そこで本研究では、2022年時点で自立して生活する65歳以上の日本の高齢者4,616名を対象に、前歯および臼歯の欠損治療に対する支払い意欲と支払い意欲金額を調査した。さらに、支払い意欲に影響を及ぼすと考えられる人口統計学的要因、社会経済的要因、口腔・全身の健康状態など計32項目について、相対的な影響度を分析した。
その結果、前歯の欠損に対しては臼歯よりも多くの人が治療への支払い意欲を示した。また、支払い意欲に最も強く関連したのは「うつ症状の有無」だった。一方、支払い意欲金額に最も強く関連していたのは「資産の多さ」だった。加えて、教育歴、予防的な歯科受診の有無、収入、居住地域の人口密度、友人との交流頻度なども支払い意欲金額に影響していた。
以上の結果から、高齢者の歯科治療に対する支払い意欲は、経済的・心理的・社会的要因により形成されていることが示された。歯科治療への意欲を高め、口腔の健康を維持するためには、経済的な負担の軽減、メンタルヘルスの改善、社会参加の促進といった多方面からの対策が重要であると考えられる。

