東北大学流体科学研究所のLiu Yajun特任研究員、阿部圭晃准教授と、九州大学大学院工学研究院の下山幸治教授らの研究チームは、AI手法の1つである「多目的ベイズ最適化」の導入により、従来の10分の1の計算回数で大型旅客機主翼の最適形状を特定することに成功した。
近年、軽くて強い「炭素繊維強化プラスチック(CFRP)」は、次世代航空機の燃費向上を支える重要な材料として期待されている。一方で、「軽量化」と「燃費向上」は、片方を立てればもう片方が立たないトレードオフの関係にある。すなわち、燃費を良くしようと翼を細長化(高アスペクト比化)すると空気抵抗を低減できるが、その分たわみやすくなり、強度を確保するために軽量化との両立が難しくなる。
従来は、こうした条件を考慮して無数の設計案の中から最適解を得るために、数千回に及ぶ膨大な計算が必要だった。そこで今回の研究では、複数の目的を同時にバランスよく満たす解を予測するAI手法の「多目的ベイズ最適化」を採用した。この仕組みにより、設計案のシミュレーションを効率的に進めることで、従来の10分の1となる約100回の計算で理想の主翼設計を導出することに成功した。
さらに、流れる空気の力で生じる翼のたわみを考慮する流体構造連成解析に、破壊力学を統合したシステムを構築した。これにより、材料が壊れない限界まで自律的に軽量化と補強の再設計を繰り返し、空気抵抗と重量を最小化した主翼形状を自動設計できるようにした。
この技術により、主翼下面パネルは次世代炭素繊維の使用で劇的な軽量化が可能である一方、後ろ桁の重さは材料よりも翼の長さに左右されるという部材ごとの異なる特性も解明した。また、CFRPの製造時にわずかに生じる配向誤差が、高アスペクト比の翼ほど強度に大きな影響を与えることも定量的に示されたという。
本研究成果は、主翼設計に要する期間の大幅な短縮につながるだけでなく、新材料を使うべき部材とそうでない部材を見極める「適材適所」の設計知見も明らかにした。水素・アンモニア燃料機や高高度無人機など、今後の様々な形態の次世代航空機開発を加速させると期待される。


