京都大学の酒井朋子 霊長類研究所研究員、友永雅己同教授らの研究グループは7月14日、中部学院大学、金沢大学、慶應義塾大学、ジョンズ・ホプキンス大学と共同で世界で初めてチンパンジーの脳梁を真横から見た断面積がどのように発達していくのか、その過程を明らかにしたと発表した。

 ヒトとヒト以外の霊長類の脳構造の発達の仕方を比較することは、ヒトの記憶や認知などの高次脳機能の進化を知るうえで必要である。ヒトとチンパンジーの場合、ヒトは乳児期に脳梁の断面積が急速に拡大し、それ以降ゆっくりとした変化を示す。一方、チンパンジーは子ども期から老年期にかけて穏やかに変化することは分かっていた。しかし、乳児期の発達の様子は知られていなかった。

 今回、研究グループはMRIを用いてチンパジーの生後1.8ヶ月から6歳にかけて脳梁の断面積がどのように発達していくかを調べた。その結果、チンパンジーでも、乳児期を通して脳梁の断面積が2倍から3倍に急速に成長し、その後ゆっくりと変化することがわかった。これは、ヒトと同じ同様な成長過程である。その一方で、チンパンジーとヒトの大きな違いもわかった。脳梁の上方に位置する脳梁吻側体部はチンパンジーよりもヒトの方が大きく増加する。しかし、脳梁の前方に位置する脳梁吻は逆にチンパンジーの方が大きく増加することがわかった。

 このような脳梁の発達の違いは、⼈類進化に伴う脳システムの進化的変化と関連していることを⽰唆しているとしている。

 また今回の研究では初めて身体障害を持ったチンパンジー、ピコの脳データを公表した。霊⻑類研究所のチンパンジーコミュニティーの中で⺟親に育てられ、2歳で肺炎により亡くなったが、今回確認できた範囲では、ピコの脳に顕著な異常は検出されず、ピコを含めた4⼈の脳梁発達の推移は同程度だった。

論文情報:【PLOS ONE】Developmental trajectory of the corpus callosum from infancy to the juvenile stage: Comparative MRI between chimpanzees and humans

大学ジャーナルオンライン編集部

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