生殖補助医療の技術が近年大きく進歩する一方で、体外受精を繰り返しても卵子の成熟、受精、あるいは初期胚の発育が繰り返し停止する症例がある。こうした病態はOZEMA(Oocyte/Zygote/Embryo Maturation Arrest)と呼ばれ、一部の遺伝子バリアント(DNAの塩基配列の違い)の関与が疑われてきた。しかしこれまで、日本人患者におけるOZEMAの遺伝的背景については十分にわかっていなかった。

 そこで今回、藤田医科大学の研究グループは、全国34カ所の不妊治療施設と共同で、OZEMAを認めた日本人女性50名を対象に、全エクソーム解析を用いた網羅的な遺伝学的解析を実施した。その結果、国際的な基準に基づき、病気や病態の原因となる、またはその可能性が高いと判断された(病的/病的可能性が高い)遺伝子バリアントが10名(20%)の患者で同定された。原因遺伝子は、卵子の成熟や受精後の初期発生に重要な微小管を構成するタンパク質の遺伝子「TUBB8」が6名と最多で、次いで「PATL2」「ZP2」「ZP3」「CHEK1」が各1名だった。

 さらに、本研究で病的または病的可能性が高いバリアントが確認された患者は、全例で受精後3日目の胚(Day 3胚)が一度も得られていなかった。この結果から、「Day 3胚が得られない」という臨床所見が、遺伝子検査を優先的に検討し、遺伝的原因を早期に明らかにするための実用的な手がかりとなる可能性が示された。この成果は、患者に応じた治療方針の検討や開発、患者・家族への適切な遺伝カウンセリングにつながることが期待される。

 今後は、より大規模な患者集団で本研究結果を検証するとともに、今回の解析で原因を特定できなかった症例について、新たな原因遺伝子やその他の病態メカニズムを明らかにしていくとしている。

論文情報:【Scientific Reports】Gene panel analysis for oocyte/zygote/embryo maturation arrest in female infertility: a multicenter study in Japan

藤田医科大学

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