九州大学大学院の福嶋政期准教授は、VR(バーチャルリアリティ)ゴーグル(Head-Mounted Display、HMD)の「Mounted(装着)」という発想を見直し、頭部に何も装着することなく没入体験を実現する「被らないVR」を開発した。

 VR技術はゲームだけでなく、教育、医療、技能訓練、建設機械の遠隔操作など、さまざまな分野で活用が進んでいる。一方で、高い没入感を実現するVRゴーグルは、重量による身体的負担や装着・調整の手間、衛生管理などが課題となり、産業現場への普及を妨げる要因となっていた。

 今回の研究では、頭部にデバイスを装着することなく、VRゴーグルと同様の没入型映像体験を実現する新しい光学系「Mountless Aerial HMD」を開発した。

 Mountless Aerial HMDとは、「再帰透過光学素子」(表示装置の像を空中に結像させる特殊な光学素子)を利用して、利用者の目の前の中空にHMDの左右接眼光学系の実像を形成し、利用者の眼がその位置に入ることで、前方遠方に両眼立体視の虚像を提示する非装着型HMD光学系だ。映像表示装置や光学系は椅子などの環境側に配置されており、利用者は椅子に座るだけで、装着や位置調整を行うことなく直ちにVR空間へ没入できる。

 さらに、鏡を利用した光学設計によって視野角を拡大し、空中像方式における没入感を高めた。このシステムは、従来の「プロジェクション方式」と「VRゴーグル(HMD)」に加わる新しいVR提示方式を提案するものという。

 これにより、重量や装着負担、衛生管理といった従来の課題を解決するとともに、建設機械や災害対応ロボットの遠隔操作、医療・教育分野における訓練システム、エンターテインメント施設など、幅広い分野への応用が期待されるとしている。

論文情報:【Special Interest Group on Computer Graphics and Interactive Techniques Conference Emerging Technologies】Mountless Aerial HMDs: Designing Non-Wearable HMD Experiences Based on Aerial Imaging Optics

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