東京工業大学 理学院 化学系の前田和彦准教授、石谷治教授、栗木亮大学院生・日本学術振興会特別研究員らの研究グループは6月9日、ルテニウム(Ru)複核錯体と窒化炭素からなる融合光触媒が、可視光照射下での二酸化炭素(CO2)のギ酸への還元的変換反応を高効率化することを発見したと発表した。

 金属錯体や半導体を光触媒としたCO2還元は、ギ酸や一酸化炭素といった有用物質を常温常圧下で製造できる反応として注目され、30年以上も国内外で研究されている。今回、前田准教授らは、尿素を熱分解して得られるシート状C3N4が、ホスフォン酸基を吸着部位としてもつRu錯体を強固に吸着できることを発見した。これにより、C3N4からRu錯体への効率的な電子移動が実現し、その結果としてCO2光還元反応の高効率化に成功した。

 実験条件を最適化した結果、これまでに報告されていたものよりも触媒耐久性を示すターンオーバー数は3倍の2000にまで向上し、CO2還元の選択率も75%から最大で99%まで大幅に改善された。これにより、資源的制約とは無縁な炭素と窒素からなる材料を使いかつ太陽光をエネルギー源として、地球温暖化の主因となっているCO2を常温常圧下で有用な化学物質に変換できる可能性が見えてきたとしている。

 今回の研究成果により、水素を貯蔵・輸送するエネルギーキャリアとして有用なギ酸が、組み合わせる錯体を変えることで化学燃料として価値の高い一酸化炭素を高い選択率で得ることも可能になることがわかった。また、C3N4は炭素や窒素を含む安価で単純な有機物から容易に合成できる。主構成元素である炭素や窒素以外の元素を取り込むことで、よりエネルギーの小さい可視光の有効利用も可能になり、ひいては太陽光エネルギーの有効利用につながると期待される。

論文情報:【Angewandte Chemie, International Edition】Robust Binding between Carbon Nitride Nanosheets and a Binuclear Ruthenium(II) Complex Enabling Durable, Selective CO2 Reduction under Visible Light in Aqueous Solution

大学ジャーナルオンライン編集部

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