花粉やダニが原因で引き起こされるアレルギー性鼻炎は、くしゃみ・鼻水・鼻づまりなどの症状を生じ患者のQOL(生活の質)を著しく損なう。順天堂大学と名古屋大学の共同研究グループは、今回、生体内にも存在するセラミドのリポソームの点鼻がアレルギー性鼻炎を抑制することを明らかにした。

 アレルギー性鼻炎では、花粉などの抗原が届くと、鼻のマスト細胞が活性化して顆粒を細胞外に放出(脱顆粒)し、その顆粒に含まれるヒスタミンなどの炎症惹起分子がアレルギー反応(くしゃみ、鼻水、鼻づまり)を惹起する。研究グループはこれまでに、マスト細胞に発現する抑制型受容体CD300fに脂質のセラミドが結合すると、マスト細胞の脱顆粒が抑えられることを見出してきた。CD300fを欠損したマウスモデルでは、アレルギー性鼻炎症状が悪化し、脱顆粒しているマスト細胞も多く認めたことから、CD300fはマスト細胞の脱顆粒を抑制する作用を持つと考えられる。そこで、生体内に存在し、かつ、CD300fの抑制作用を強める働きが確認されているセラミドの投与が、アレルギー性鼻炎に有効かどうかを検討した。

 アレルギー性鼻炎モデルマウスに予めセラミドリポソームを点鼻しておくと、アレルギー性鼻炎を誘導するブタクサ花粉を鼻腔投与しても、マウスのくしゃみ頻度は著減し、マスト細胞の脱顆粒も抑制されることがわかった。セラミドリポソームはマスト細胞のCD300fに作用して抑制作用を高め、マスト細胞の脱顆粒を抑制し、アレルギー性鼻炎を強く抑えることが示されたとしている。

 本治療法は、生体内に存在するセラミドのリポソームを点鼻するため、安全で有効なアレルギー性鼻炎治療法となる可能性が示唆された。今後は、臨床応用に向けた研究開発の進展が期待される。

論文情報:【Scientific Reports】Intranasal administration of ceramide liposomes suppresses allergic rhinitis by targeting CD300f in murine models

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