静岡大学農学部の花岡創准教授の研究グループは、静岡県農林技術研究所森林・林業研究センター、神奈川県自然環境保全センター、森林総合研究所林木育種センターと共同し、無花粉スギ「春凪 (はるな) 」を開発した。森林総合研究所の優良品種・技術評価委員会から優良品種の評価を得ており、花粉症対策に大きな期待が寄せられている。
静岡大学によると、無花粉スギは一つの遺伝子の変異から発生し、変異遺伝子を持つ個体同士を交配させることで作り出せる。研究グループは変異遺伝子を持つ神奈川県の「田原1号」と静岡県の「大井7号」の人工交配で生まれたスギから無花粉で成長速度や材質など林業用品種としての特徴に欠点がない個体を選別した。
この個体は2010年、神奈川県自然環境保全センターと静岡県農林技術研究所森林・林業研究センターが共同で作出し、静岡県農林技術研究所森林・林業研究センターの試験地で育成している。今後、静岡県内などで林業用品種として活用するほか、既存の優良品種と交配して新たな無花粉スギを作り出す育種素材となる。
スギ花粉症は日本で深刻な社会問題になっており、解決策として無花粉スギの開発と普及が求められている。しかし、無花粉スギはまだ品種が少ないうえ、新たな品種開発に向けた育種素材を充実させる必要がある。