東京都立大学と米国University of Iowaの共同研究グループは、ストレスによってショウジョウバエの求愛行動が低下し、その抑制状態の維持に神経伝達物質ドーパミンが関与していることを明らかにした。
ヒトやラットなどの哺乳類では、ストレスがオスの性的モチベーション(性欲)を低下させることが知られている。しかし、その脳内メカニズムは十分に解明されていない。
そこで本研究では、遺伝学的解析が容易なショウジョウバエをモデル生物として、ストレスが性行動に及ぼす影響を検証した。
まず、オスバエを狭い空間に閉じ込める「狭所ストレス」を与え、その後の求愛行動を定量化した。その結果、ストレス経験後はメスへの求愛が有意に減少し、ストレス時間が長いほど求愛抑制は強く、長時間持続することがわかった。さらに、この求愛抑制は運動低下や食欲低下よりも長く続いたことから、ストレスによって性欲の低下が維持される可能性が示された。
次に、多くの動物でストレスによって変化することが知られる神経伝達物質ドーパミンに着目して解析したところ、ストレス直後の「求愛抑制の開始」はドーパミンの状態に依存しない一方、「求愛抑制の維持」にはドーパミンが必須であることが明らかになった。ハエ脳では、ドーパミンを放出する神経細胞群から、学習や記憶に重要な役割を担うキノコ体と呼ばれる領域に存在するドーパミン受容体への入力が、求愛抑制の維持機構に関与していたという。
本研究は、ストレスによる性機能低下の背景に「ドーパミンによる維持機構」という新たな神経基盤を示した。この成果は、ストレスによる意欲低下や行動変化の仕組みの理解を深め、将来的な予防・介入法の開発にも寄与することが期待される。
