11月15日、青山学院大学において、株式会社パロマ代表取締役会長兼社長である小林弘明氏へ、「万代基金」への寄付に対する感謝状の贈呈と、青山学院大学陸上競技部長距離ブロックの原晋監督との対談「挑戦する覚悟~若者へのエール~」が開催された。
コロナ禍で、困窮する学生が増加するなか、今回、小林氏より学校法人青山学院・万代基金に10億円の寄付という明るい話題がもたらされた。万代基金とは、青山学院大学の卒業生であり、日本の実業界に大きな足跡を残し、苦学生への奨学金のため個人資産の殆どを寄付した万代順四郎氏(1883年~1959年)の名を冠した基金である。基金の運用益は返済不要な給付型奨学金に使用し、世界に伍する教育研究のため、将来的に1000億円に増やす目標を掲げている。
失敗とは、何もしないこと。若者には、恐れずチャレンジして欲しい
小林氏も青山学院大学の卒業生。これまでさまざまな人から助けてもらったり、青山学院時代に学校の代表として台湾に招かれた経験などを振り返り、学校から受けていた有形無形での恩恵をいつか何かのかたちで返したいと思い今回の寄付を至ったと話す。小林氏は自身でも小林弘明奨学金財団を設立し、給付型奨学金によって学生を支援している。奨学金を受けた家庭の親御さんから感謝の言葉をもらうたびに、その支援が生きたお金になっていることを実感するという。
若者に向けてのエールを求められると、「何でもいいから、社会に役立つ、誰かのためになると自分の信じたことを一生懸命やっていれば、共感してくれる人や仲間ができる。だから、とことんしがみついてやればいい、失敗を恐れず前に進んでいって欲しい」と語った。
年始に迫る箱根駅伝。「準優勝の『準』を取って勝ちたい」と、その意気込みを語る原監督は、学生に対しては、「箱根で勝つことだけでなくプロセスにおいても勝つこと、そして、陸上を通して社会に出てから勝てるように学生を育てていくことが自身の使命だと感じている。原にまかせれば、結果を出してくれるそういう信頼を勝ち得ていきたい」と話した。
先人たちがゼロからルールをつくってきた今の世の中で、ルールを当たり前のように守っている若者に対して、原監督は疑問も投げかける。「今あるルールは、いつ誰のためにつくられたのか、今後はあなた方、若者が新しいルールを作る番なんですよと言いたい。言われたことをやるだけでなく、世の中が大きくかわってきている今、20年、30年先を見据えたルール作りをしてほしい。失敗とは、何かをして起こる現象ではなく、何もしない、チャレンジしない現象を失敗というのです」と叱咤激励、若者にエールを送った。
学生支援への取り組みと学校経営
終盤、堀田宣彌(ほったのぶみつ)理事長から、小林氏に感謝の意が伝えられるとともに、今後も学校経営にこだわり、給付型奨学金を増やし学生支援に力を入れていくことが話された。
小林氏は、原監督が箱根駅伝で青山学院大学を優勝に導いて以来、新年の挨拶に行く先々で箱根駅伝の話題になり「おめでとうございます」といわれるようになった、否が応でも卒業生であること、愛校心を掻き立てられると話す。また、世界中にある同学の校友会にもお正月の駅伝を楽しみにしているという声が寄せられているという。箱根駅伝しかり、受験においても名実ともに人気の難関校となった青山学院大学だが、一方でこうした学生支援を掲げ、学校経営を取り組む姿はまだあまり知られていないようにも感じる。
お金の話をすることについて、日本人はとても神経質だ。学校や教育に関しては、なおさらともいえる。しかし、コロナ禍によって、その重要性は浮き彫りになった。今回の対談を通して、学校教育も経営によって健全に潤ってこそ学生をバックアップできること、学校経営や寄付の在り方について、あらためて考えさせられる機会となった。