学部生・大学院生合わせて約9,000人の学生が学ぶ長崎大学では、学生が主体的に卒業後のキャリアや生き方について考えていけるよう、全学部の学生に1年次からキャリア教育を必修科目とし、社会体験などの機会を提供してきた。しかし、OB/OG情報の提供に関しては改善の必要性を感じており、地方国立大学が故の「地理的な情報格差・機会格差」が課題となっていた。そのような中、全学に先駆けて、2023年5月に多文化社会学部がビズリーチ・キャンパスを導入。そして同年9月、公認OB/OG訪問サービスとして国立大学で初めて、全学部で「ビズリーチ・キャンパス」を導入した。導入の経緯や効果について、キャリアセンター長を務める井上徹志副学長と、多文化社会学部の白井章詞准教授に話をお聞きした。
「自らの人生を、自ら切り拓くキャリア力の育成」を目指し、キャリア支援の内容を拡充
長崎大学は、⼤学1年次からのキャリア形成⽀援を強化するため、2019年に「キャリアセンター」を開設。「自らの人生を、自ら切り拓くキャリア力の育成」を理念に掲げ、「キャリア教育」「キャリア相談」「就職⽀援プログラム」「社会体験プログラム」「情報提供」を軸に据えた⽀援を⾏っている。
これらの支援内容において、特に力を入れているのが「社会体験プログラム」と「キャリア相談」である。「社会体験プログラムは、ボランティア支援やアントレプレナーシップの醸成など複数の支援を行っています。たとえばボランティア支援は、やってみゅーでスクがマッチングを行い、ボランティア保険にも入ってもらった上でボランティア先に送り出しています」と、キャリアセンターのセンター長を務める井上徹志副学長は語る。
社会体験プログラムは、キャリアセンターが理念に掲げている「自らの人生を、自ら切り拓くキャリア力の育成」を達成する上で非常に重要である。「キャンパスの外でさまざまな組織や人々と関わった経験が社会人基礎力を育み、生涯に渡ってキャリアを形成していく“礎”になると考えています」と井上副学長。
また、キャリア相談に関しては年間2,000件ほどの相談があるという。「ニーズの高さを受けて、従来の事前予約が必要な50分枠に加えて、当日予約ができる30分のクイック相談も新設しました」(井上副学長)
キャリア相談では、カウンセラーが学生から個別に話を聞く機会を設けているが、キャリア形成の主体となるのは言うまでもなく学生自身だ。キャリアセンターが行なっている支援は、すべて「学生が主体的にキャリアを築く」ために行なっているものである。
キャリアセンターのセンター長を務める井上徹志副学長。学生が主体的にキャリア形成を進めていけるよう尽力している。
ビズリーチ・キャンパス導入が、地方国立大学の「地理的な情報格差・機会格差」の是正に
長崎大学は長崎県長崎市にキャンパスを構える地方国立大学であり、学生の多くが九州出身である。しかし、全国から学生が集まる学部もあり、卒業生の就職先も国内全域はもとより、海外にも拡がっている。
「これまでも学生の依頼に応じてOB/OG情報を提供してきましたが、転職や住所移転などにより最新情報を把握することが難しく、繋がりが途絶えてしまう卒業生が増えていました。また、本学がOB/OG情報を学生に提供しても、勤務先が首都圏にあるため地理的に訪問が難しいという課題もありました」(井上副学長)
長崎から首都圏の会社に勤務するOB/OGに会いに行く場合、交通費や宿泊費などもかかるため、時間やコスト面からも訪問の実現は難しい。都市部の学生と比較すると地理的な情報や機会の格差があり、この格差を何とか是正したいと井上副学長は考えていた。
加えて、OB/OGの最新情報を把握できないため、各学部の教員を通じてOB/OGに連絡を取ってもらうケースも増え、教員の負担増加も課題だった。
このような状況のなか、全学に先駆けてビズリーチ・キャンパスを導入したのが、同学の多文化社会学部である。「白井章詞准教授が教鞭をとる多文化社会学部でビズリーチ・キャンパスを導入し、その後、キャリアセンターでも検討して2023年9月より全学で正式に導入することが決まりました」(井上副学長)
導入メリットについて、井上副学長は次のように語る。「オンラインでもOB/OGとやりとりができるビズリーチ・キャンパスであれば、本学の地理的な課題はすべて解決できます。すでに多文化社会学部で導入済みなので、個人情報の取り扱いなどのセキュリティ面においても信頼できるシステムであることが証明されていたので、学内の稟議もスムーズにおりました」
キャリアセンターは、就職内定者を対象に学生サポーターを募り、在学中から学生を支援していく「学生キャリアサポーター」の制度を2023年度より開始した。「学生キャリアサポーターが卒業時にビズリーチ・キャンパスに登録し、卒業後はOB/OGとして本学の学生を支援する。このようなつながりを作っていけたら嬉しいですね」と、今後のビズリーチ・キャンパスの活用について井上副学長は語ってくれた。
「ビズリーチ・キャンパスの導入は、これまでの課題であった地理的な情報格差や機会格差を是正してくれると期待しています」と、井上副学長。
→グローバルかつ広い視野を持つ人材育成に取り組む多文化社会学部
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