早稲田大学アクティヴ・エイジング研究所は、生体材料、メカトロニクス、MEMSの異分野の若手研究者が結集し、高分子ナノシートの柔軟性と密着性を利用し、熱処理を用いない手法で電子素子を固定・通電させる封止技術を開発したと発表した。さらに開発したデバイスを柔軟な生体組織表面でも安定的に通電させることに成功した。

 近年、シャツや腕時計のように身体に装着することで生体情報(体温、脈拍、血圧、血中酸素濃度、pH、筋電位など)を計測するウェアラブルデバイスが普及しつつある。また、薄膜形成技術の進歩とともに、次世代のウェアラブルデバイスの形態は皮膚などの生体組織に絆創膏のようにして「貼る」時代に進展すると予想されている。貼り付けた際に違和感のないように電子回路を構成する素子を柔らかいプラスチック薄膜表面に取り付ける必要があるが、従来の電子素子の固定方法では、高温処理を要する接合部が硬化するという問題があり、基材を薄くするほどに素子を安定に固定することが困難だった。

 そこで研究グループは、高分子ナノシートの柔軟性と密着性を利用することで、熱処理を用いない手法で電子素子を固定・通電させる封止技術を開発。ナノシートは、数十~数百ナノメートルという超薄性に由来する高い柔軟性と密着性を示す。今回の研究では、このナノシート表面への導電性銀インクの印刷、ナノシートの柔軟性と密着性を利用した配線・素子の封止、さらに、LEDを搭載したデバイスの皮膚上での動作性について検証した。

 検証の結果、SBSというナノシートで電子素子を挟んだところハンダ付けなどの高温処理工程を用いることなく、ナノシートの柔軟性と密着性を利用して配線と電子素子を接続することに成功した。また、ナノシートの膜厚を薄くするほどに電子素子の密閉性は向上し、より小さい接触抵抗値で接続できたことから、印刷配線と素子の電気的接続はナノシート特有の柔軟性と密着性に由来することを明らかにした。さらに、SBSナノシートとLEDからなるデバイス(シート部総膜厚:約800 nm)を皮膚に貼付したところ、柔軟な生体組織表面でもLEDを安定に点灯させることに成功した。

 この研究で開発した手法は、基材が薄く柔らかいため皮膚などに貼り付けた際に違和感がなく接着性が高いという優位点がある。さらに耐熱性の低いプラスチック基材や電子素子に応用でき、ICチップなどの精密機器の封止にも有用。また、電子回路の配線は家庭用のインクジェットプリンタで設計・印刷でき、ナノシートを印刷基材と封止材に用いれば、誰でも簡単に低コストで「皮膚貼付型エレクトロニクス」を作製可能で、学習用キットとしての利用も見込まれるとしている。

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大学ジャーナルオンライン編集部

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