東京工業大学科学技術創成研究院未来産業技術研究所の水野洋輔助教と中村健太郎教授は、林寧生博士、ファナック株式会社、韓国中央大学とともに、光ファイバー中の変形(伸び)と温度を検出できる分布型光ファイバーセンサーの性能向上に取り組み、片端からの光入射とリアルタイム動作の両立に世界で初めて成功した。

 近年、高度経済成長期に建設された社会インフラの経年劣化や、地震等の自然災害対策が大きな社会問題として浮上している。対策としてビル、トンネル、橋梁などに光ファイバーを埋め込み、両側から光を入射して構造物の変形を監視する方法が使われつつあるが、センサーの敷設に手間がかかるほか、途中で1か所でも破断すると動作が停止してしまう難点があった。

 そこで研究チームは2つの正弦波が時間的にどれくらいずれているかを検出する位相検波技術に基づき、片端からの光入射ができ、測定速度が従来法の5,000倍以上となる分布型光ファイバーセンサーを開発。特定の位置での伸びや温度を1秒間につき10万回まで測定することを可能にした。また、たわみ変形の伝搬を追跡することで、リアルタイム動作を実証した。

 本システムは、ビル・橋梁・トンネル・ダム・堤防・パイプライン・風車の羽根・航空機の翼など、様々な構造物に関わる防災・危機管理技術としての応用範囲を広げ、生活の安全性向上に寄与する。さらにアームに巻き付けることで、任意の位置で接触や変形、温度変化を検出するロボットの新たな「神経」としての応用も期待されている。

大学ジャーナルオンライン編集部

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