摂南大学農学部の井上亮教授、藤林真美教授、スポーツ振興センターの瀬川智広准教授、京都府立医科大学の研究グループが摂南大学ラグビー部員の腸内環境を調べたところ、一般健常者に比べて悪玉菌とそれらが作るコハク酸が多く、コハク酸が大腸炎患者のレベルに達しているケースもあることが分かった。
摂南大学によると、ラグビー部員の腸内環境は悪玉菌が作り、炎症などを引き起こすコハク酸が多いにもかかわらず、炎症を抑え、免疫を調整する酪酸が一般人より少なく、4分の1は検出さえしなかった。
さらに、食物繊維の摂取が少ないと増加するコリンセラ菌が一般人の2倍以上存在していた。ラグビー部員は4,000~4,800キロカロリーの食事で12~14グラムしか食物繊維を摂取しておらず、一般人の平均摂取量17グラムより少なかった。
酪酸は酪酸菌が作るが、酪酸菌を含む食品は少ない。このため、腸内で酪酸を増やすには酪酸菌のえさになる食物繊維を摂取する必要がある。しかし、ラグビー部員はタンパク質や炭水化物の摂取が体作りに大切と考え、結果として食物繊維の摂取が不十分になっていることが明らかになった。
被験者の1人であり、現在ジャパンラグビートップリーグである東芝ブレイブルーパスに所属するの高城勝一選手に、大学卒業前の4週間、サプリメントと食事で1日40グラムの食物繊維を摂取してもらったところ、接種前に検出されなかったビフィズス菌や酪酸菌など善玉菌が大きく増え、コハク酸が5分の1に減っていた。ラグビー部所属時のエネルギー摂取量はそのままに、体重(筋肉量)が増加、便通も改善し、以前はよく出ていたニキビも治るなど、体調が劇的に改善した。
研究グループは機能性食品の摂取だけでも腸内環境が大きく改善するとみており、この結果をうけ、現在、食品企業の協力のもと、ラグビー部員の腸内環境の改善を試みている。摂南大学では学生アスリートの栄養改善によるパフォーマンスの更なる向上を目指して今後も研究を続けるとしている。