東邦大学医学部と東北大学大学院医学系研究科の共同研究グループは、味覚に対するリハビリテーション法を開発し、世界で初めてその効果を検証した結果、健常者の味覚感受性の向上に有効であることを示した。

 本グループが考案した味覚リハビリテーション法は、以下の4つのステップからなる。まず、ステップ1で濾紙ディスク法を用いた味覚検査により4種類の基本味(甘味、塩味、酸味、苦味)の認知閾値をそれぞれ5段階の濃度から計測する。ステップ2で認知閾値の1つ濃い濃度を記憶させ、認知閾値の味と照合させる。ステップ3で認知閾値の1つ濃い濃度の味を記憶させ、認知閾値の1つ薄い濃度の味と照合させる。ステップ4で認知閾値の味を記憶させ、認知閾値の1つ薄い濃度の味と照合させる。

 42名の健常者を対象とした研究で、この一連のサイクルを実施する21名のリハ群と、実施しない21名の非リハ群に無作為に分け、効果を検証したところ、リハ群では有意に4つの基本味ともに味覚の感受性が高まる(より薄い濃度の味を認識できるようになる)ことが確認された。味覚リハビリテーション法は経時的に有効性を示し、両群の最初の味覚認知閾値には有意差がなかったが、4日目の時点でリハ群は非リハ群と比較して有意に味覚感受性が向上していた。

 近年、高齢化とともに味覚障害患者が増加していることに加え、COVID-19感染後に味覚障害が残存する患者が報告されている。味覚障害に対する明確な治療法は存在していないのが現状であり、味覚障害に悩む患者の増加が危惧される中、本研究で、味覚リハビリテーション法が味覚障害を改善させる可能性があることがわかった。

 今後、味覚障害患者に対する新たな治療法の一つとして、味覚リハビリテーション法が確立することが期待される。

論文情報:【Scientific Reports】Improving taste sensitivity in healthy adults using taste recall training: a randomized controlled trial

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