京都大学の杉浦悠殻特定准教授らは、月経痛の重症度を高い精度で判別できるバイオマーカーの発見に成功した。

 重度の月経痛(月経困難症)は、他人とは比較できない「痛みの個人差」によって、痛みの程度を客観的に周囲に伝えることが難しく、無理な我慢をしたり、適切な医療機関の受診が遅れたりする傾向がある。これまで、月経痛の重症度を判別する研究が数多くなされてきたが、確度の高いバイオマーカーの特定には至っていないのが現状である。

 今回、本研究者らは血漿(血液の液体成分)中の代謝産物に着目し、月経痛の軽い人と重い人の指先から採取した血漿のメタボローム解析を行ったところ、月経痛の重さに応じた有意な代謝変動が生じていることを確認した。中でも、分岐鎖アミノ酸(BCAA)と呼ばれるアミノ酸群と、特定のフォスファチジルイノシトール(PI)という脂質が、月経痛の重症度の判別に寄与しており、有望なバイオマーカーとなることを発見した。さらに、BCAAと特定のPIの「量比」が、月経痛が重い人ほど増加しており、それぞれの代謝産物を単独で用いるよりも、優れた精度で月経痛の重症度を判別できることを確認した。また、BCAAと特定のPIの比率は、月経期以外の卵胞期や黄体期でも一貫して主観的な痛みとの高い相関を示したことから、月経周期を問わず月経痛の重症度を評価でき、次の月経痛の強さの予測も可能であることを示した。

 以上により、検査のタイミングにとらわれず、指先からのわずかな血液の採取だけで、月経痛がどれくらい痛いのかを高い精度で客観的に判定できる可能性が見出された。本研究成果が将来的に簡便な検査ツールとして応用されれば、周囲の支援が得やすくなったり、月経痛の強さを予測して事前に準備できたりすることにつながり、女性のQOLを高める可能性が期待される。

論文情報:【Scientific Reports】Branched-chain amino acids and specific phosphatidylinositols are plasma metabolite pairs associated with menstrual pain severity

京都大学

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