2021年3月5日、政府は図書館の蔵書の一部分を調査研究目的で電子化して電子メールで利用者に送信できるようにする著作権法改正案を閣議決定した。これまで紙による複写物しか提供できなかったが、デジタル時代に合わせて利便性の向上を目指した。

 文化庁によると、メール送信は著作権者の利益を不当に損なわず、正規の電子出版市場を阻害しないことが条件。図書館側にデータの流出防止策を講じることを求めるほか、図書館を設置する地方自治体や大学などに補償金の支払いを義務付ける。

 国立国会図書館の絶版資料データ送信先はこれまで、図書館などに限定されていたが、これを利用者に直接送信やウェブサイト掲載をできるようにする。大学の研究者らは最寄りの図書館にデータを送付してもらい、そこへ出掛けて閲覧しなければならなかった手間を省けることになる。

 さらに、研究者らは自分で利用するために必要な複製をできるのに加え、無料かつ非営利の条件の下でディスプレイなどを使って公に見せることが可能になる。

 紙からデジタルへと時代が大きく変化する中、新型コロナウイルスの感染拡大でいちいち図書館へ出向いて資料を閲覧しなければならないことが、研究の支障になってきた。文化庁は著作権の保護と同時に、時代に合わせた閲覧方法の変更を可能にするため、文化審議会の作業部会で法改正を検討していた。

参考:【文部科学省】著作権法の一部を改正する法律案(説明資料)

大学ジャーナルオンライン編集部

大学ジャーナルオンライン編集部です。
大学や教育に対する知見・関心の高い編集スタッフにより記事執筆しています。