被災後の健康被害による「災害関連死」予防の研究を進める、福岡大学医学部看護学科の古賀佳代子教授(災害看護)は、九州で豪雨災害が発生しやすい時期を迎える中、「災害関連死」予防への備えを呼びかけている。
気象庁が「顕著な災害を起こした自然現象」として命名した豪雨災害のうち、九州で発生した事例は10件(台風を除く)にのぼり、そのうち9件が7月に発生しており、九州では7~8月が特に豪雨への警戒が必要となる。
災害関連死とは、地震や豪雨などによる直接的な被害ではなく、避難生活や被災後の身体的・精神的負担によって健康を損ない、亡くなることを指す。
避難生活では、活動量の低下、栄養の偏り、精神的ストレスなどが重なりやすく、高血圧、エコノミークラス症候群、脱水症、生活習慣病の悪化、感染症といった健康リスクにつながるため、近年、災害対策では避難生活中の健康維持が重要な課題となっている。
被災直後の食事は、おにぎりやパンなど炭水化物中心になりやすく、栄養の偏りが課題となる。高血圧や糖尿病などの持病を持つ場合は健康状態の悪化につながる可能性がある。
また気温が高い夏季の避難生活では脱水症のリスクが高まる。避難所では「トイレに行きにくい」「周囲に遠慮してしまう」といった理由から水分摂取を控えるケースが少なくない。高齢者は喉の渇きを感じにくいため、脱水症の早期発見が難しいことも指摘されている。
さらに被災者は、家族の安否への不安、自宅被害、今後の生活への不安など、大きな精神的ストレスにさらされる。避難生活が長期化すると、うつやPTSD(心的外傷後ストレス障害)の発症リスクも高まる。
福岡大学では、災害関連死の予防を目指して、避難所での健康状態を把握するための、被災者自身が健康状態を確認できるスクリーニング票の開発や、訪問看護ステーションにおける安否確認・支援を効率化するアプリの開発に取り組んでいる。このアプリで利用者が自身の安否状況、健康状態、支援の必要性などを発信することで、訪問看護師が優先的に支援が必要な人へ迅速に対応できる仕組みの構築を目指している。
