東京大学大学院工学系研究科 松尾・岩澤研究室(以下、松尾研)は、日本語で話されている講義動画から英語字幕を自動生成し、字幕ファイルを出力するデスクトップソフトウェアを開発し、オープンソースソフトウェア(OSS、Apache-2.0ライセンス)として無償で公開した。
東京大学大学院の工学系研究科では、2025年度より英語で実施可能な授業については原則として英語で行う方針を掲げている。工学の分野では英語が世界の標準言語であり、授業の英語科は工学系研究科の大学院生の約4割を占める留学生への教育効果を高めるとともに、教育・研究組織としての多様性や国際競争力の向上につながると位置づけられている。
松尾研でも講義コンテンツの英語化に取り組むにあたり、課題となっていたのが英語字幕化にかかる作業時間。翻訳と字幕作成を人手で行っており、特に意味のまとまりを保ったまま字幕を分割し、字幕の表示速度や文字数のルールに合わせて時間を割り当てる工程や、話し始め・話し終わりにタイムコードを合わせる工程が大きな負担となっていた。
今回開発したソフトウェアは、日本語で話されている動画・音声から英語字幕を自動生成し、字幕ファイルを出力するデスクトップアプリケーション。字幕の表示速度や1行あたりの文字数といった「読みやすさ」の制約をプログラム側で検査・調整する設計とし、形式を守った字幕を安定して生成する。
本ソフトウェアは完全自動ではなく、人手を最小化する補助自動化という位置づけで、字幕エディタ上で、表示速度や文字数の警告、確認が必要な箇所を示すバッジを見ながら、効率的に編集・承認できるようにした。これにより講義1本あたりの総所要時間が導入前の約30.3時間から導入後は約25.5時間となり、約16%削減される結果となった。あわせて、従来は複数の担当者・ツールに分かれていた工程を、翻訳担当者が英訳の修正から字幕編集、SRT出力まで一貫して担当できるようになった。
また、本ソフトウェアが生成した字幕はそのまま、あるいはほとんどが最終的な字幕として採用される品質であり、字幕作成における人の作業は、ゼロからの作成から機械が生成した字幕の確認・修正へと移行。担当者からも、翻訳品質と字幕の見やすさが向上したとの評価が得られている。
本ソフトウェアは、東京大学の授業英語化への対応にとどまらず、講義動画の英語化に取り組む教育・研究機関にとっても有用と考えられることから、Apache-2.0ライセンスのOSSとして広く公開することとした。誰でも自由に利用できる。
参考:【松尾・岩澤研究室】東京大学 松尾・岩澤研究室、講義動画に英語字幕を自動付与するソフトを開発 ─日本語音声から英語字幕(SRT)までを一気通貫で生成、Apache-2.0でOSS公開─
