福岡歯科大学の田中芳彦教授らの研究グループは、歯周病の主要な原因細菌であるポルフィロモナス・ジンジバリス(Pg)の感染が、不安様行動や記憶・学習障害といった認知機能障害を引き起こすことをマウス実験で実証し、免疫細胞が口から脳へ移動して認知機能を障害する「口腔-脳連関」を発見した。
歯周病は国内で多くの成人が罹患する慢性炎症疾患の感染症で、近年は認知機能低下・認知症のリスク因子として世界的に注目されている。しかし、その免疫学的メカニズムは不明だった。
研究グループは今回、独自のPg誘導性歯周病マウスモデルを用いた実験により、Pgの経口感染によって歯周病を発症したマウスが、不安様行動や空間記憶・物体認識記憶の障害を示すことを確認した。
さらに、これらの認知機能障害の原因として、インターロイキン-17A(IL-17A)(歯周病における歯肉炎や骨破壊の主要な促進因子)を産生する免疫細胞のガンマ・デルタ(γδ)T細胞が歯周局所で活性化した後、頚部リンパ節を経由し、CCL20/CCR6シグナル経路を介して脳の大脳皮質へ移動・蓄積しており、IL-17A/IL-17RAシグナルの活性化によって記憶に関わる神経回路に障害が生じることが示唆された。
また、歯周病原細菌の感染により血液脳関門(BBB)の透過性が亢進することも確認され、γδ T細胞が脳内に侵入する経路として重要であることが示された。
抗IL-17A抗体・抗CCL20 抗体・抗TCRγδ抗体をそれぞれ投与したところ、いずれの場合も不安様行動や認知機能障害が有意に改善した。今回の結果は、IL-17A産生γδ T細胞やCCL20/CCR6経路が、歯周病に関連した認知機能低下に対する新たな治療標的となり得るもので、将来的な予防・治療法の開発が期待されるとしている。
論文情報:【Cell Reports】Interleukin-17A-producing γ δ T cells drive cognitive dysfunction in periodontitis
