京都産業大学は2027年4月、現代社会学部に「心理学科」を新設する。現代社会学部が強みとするリーダーシップ教育やデータサイエンス教育等を融合させ、時代の要請に応える新しい心理学科を目指す。開設を主導する藤野担当副学長に話を聞いた。

 

今なぜ心理学科か?――開設へ向けた取り組み

 本学は1965年、京都・上賀茂の地にキャンパスを設けました。そして校名から明らかなように、産業界の発展に寄与する実学、学問・研究に重きを置くとの理念の下、経済学部と理学部の2学部からスタートしました。その後、総合大学としてさらなる高みを目指す中で、創立50周年の2年後、2017年には現代社会学部を、そして、創立60周年の節目を経た今年、そこに社会学と親和性の高い「心理学」を加えるチャンスが巡ってきたと喜んでいます。

 学生の街として知られる京都にあって、京都ノートルダム女子大学(以下、ノートルダム)の心理学科は、京都における心理学の先駆的な存在として、高い教育・研究水準を維持されてこられました※。それが募集停止によって途絶えることは学生の街としての損失であり、地域のニーズにも沿えなくなる。そこで本学がその受け皿となれば、社会的な意義があるのではと、大学として判断しました。

 本学では、2028年度に大学院の開設も検討しており、2029年のノートルダム閉学後も学部生・大学院生の進学をサポートする予定です。

 こうした経緯から、近い将来の超少子化を見据えた「学びの環境を守るモデルケース」としても注目されているようですが、移設や統合に当たっては、教員間の意思疎通や協力体制の構築が極めて重要です。その点、すでに本学とノートルダムの間で力を合わせて新学科を盛り立てていこうという雰囲気が高まっていて心強い限りです。

※2000年に開設された生涯発達心理学科は、2005年関西初の心理学部に改組された。2026年現在は現代人間学部心理学科。 

新しい心理学科は、2プログラムを柱に

 本学の心理学科では、社会学の基礎や心理統計、実験、社会調査を学びの基盤とし、「臨床心理プログラム」と「社会・産業心理プログラム」の2つを軸に学びを展開します。さらに「データ心理学プログラム」を選択することで、多様なデータを読み解き、エビデンスを基盤に施策の意思決定や行動変容に活かせる、より応用的・実践的な分析力を身につけることができます。

 「臨床心理プログラム」では、ノートルダムの心理学科がこれまで大切にしてきた人の心のケアに関する学びを中心とし、主として公認心理師の資格取得を目指します。そのため、大学院修士課程への進学が推奨されます。

 「社会・産業心理プログラム」では、企業や地域など、社会の様々な場面で心理学の専門的な知見を実践に活かすことを学びます。具体的には、社会心理学の視点から消費行動を分析する「消費者行動の心理学」といったマーケティングに役立つ科目から、「共生社会のための心理学」といった心理学の視点からこれからの社会のあり方を考える科目まで、幅広い学びを用意します。

 さらに本学部で培ってきたリーダーシップ教育を組み合わせることで、企業や地域などの様々な組織の中で人々の協働を促し、社会課題の解決へとつなげるリーダーシップ力を養うことができます。目指す資格としては、企業内でのメンタルヘルスを担当する産業カウンセラーなどが想定されています。

 取得を目指せる資格は、ほかにも准学校心理士、商品やサービス企画の調査・分析のプロを目指す社会調査士・認定心理士(心理調査)といったものまで多彩です。

 また本学のワンキャンパスの特性を活かし、他学科はもちろん、他学部の専門性と融合させることで、心理学は社会課題の解決や研究成果の社会実装に向けて大きな力を発揮すると考えます。具体的には、教員志望の現代社会学科や健康スポーツ社会学科の学生が不登校や学習困難などの課題を抱える生徒へのケアを学ぶ科目を履修することで、一人ひとりの生徒に寄り添い適切に支援できる教員を目指すことができます。また、経済学部において、知覚・認知心理学の知見を取り入れることで、人々の意思決定や行動変容に対する理解を深め、それらを政策や制度設計に活かすことも考えられます。
現代社会学部の校舎であるサギタリウス館

心理学科の開設が次世代型総合大学への歩みを加速

 大学全体を視野に入れると、この心理学科の開設は、現代社会学部だけでなく本学全体に「1プラス1が4にも5にもなる」シナジーを生むのではないかと期待しています。

 これまでの60年間で培われてきた校風の刷新にも期待が持てます。伝統的に男子学生の比率が高かった本学にとって、心理学科の設置は元々心理学に関心の高い女子生徒からの注目を集めることが期待できます。将来的にはこのことがキャンパス全体のダイバーシティを加速させ、ひいては大学全体のさらなる活性化につながってほしいと思っています。

 受験生の視点に立てば、大学・学部選びの際の選択肢を広げることにも寄与するはずです。受験界でよくいわれる「関関同立」や「産近甲龍」という括りの中で、本学の心理学科は最後発となりますが、ここで既存の枠組みにとらわれない新しい心理学の形を提示できれば、受験生にとって魅力ある大学の1つになれるのではないでしょうか。

 AIとともに生きていくことが当たり前となるこれからの時代においては、データや技術を活用する力と同時に、それらが人の心や社会に及ぼす影響を深く理解することが、重要となります。悩みへの対応がAIによって代替されていく場面が増えるとしても、人とのつながりを失い、孤独を抱える人が増えている現代社会に求められるのは、AIによる回答以上に、人に受け止められる経験や人と人との関係性の回復であるのかもしれません。

 現代の課題を真に解決するためには、最新のデータリテラシーに加え、人の心と私たちが生きる社会の双方を理解する力を備えた専門家・実践家の育成が不可欠です。そのニーズに応えることができるのが、本学の心理学科における学びであると考えます。

京都産業大学

藤野敦子 副学長

 

京都産業大学

文系・理系10学部1学環、16,000人の学生がひとつのキャンパスで学ぶ一拠点総合大学

京都産業大学は、文系・理系合わせて10学部20学科1学環、約16,000名がひとつのキャンパスで学ぶ一拠点総合大学です。この利点を活かし、実社会で生きる高度な専門知識とスキルを養うとともに、学部を越えた知の交流により総合的かつ柔軟な学びを展開しています。各分野[…]

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