東京大学、海洋研究開発機構、群馬大学の研究グループは、分解酵素を混ぜ込むことにより、深海でも速やかに生分解する「酵素内包生分解性プラスチック」の開発に成功した。
生活用品や工業製品などで主に使われている汎用プラスチックは、自然界で300年~400年以上も分解されることなく残存し続けると言われている。さらに、微生物により分解される「生分解性プラスチック」であっても、海洋に流出した場合に最終的に行き着くと考えられる深海では、分解微生物の存在が乏しいため、生分解速度が非常に遅くなることが明らかとなっている。
このような中、本研究グループは、自然由来の分解酵素をあらかじめプラスチック内に混ぜ込むことにより、あらゆる海洋環境下で生分解する酵素内包生分解性プラスチックの開発に成功した。実験では、岸壁では1ヶ月以内に、水深750m付近の深海でも5ヶ月以内にほぼ完全に分解することが確認された。酵素を内包していない生分解性プラスチックと比較すると、プラスチックや分解酵素の種類にもよるが、岸壁では5倍~50倍、深海では12倍~80倍と生分解速度が大幅に加速した。
さらに、酵素内包生分解性プラスチックは、水のない環境下で製品として使用している間は分解が起こらず、環境中に流出した後、摩耗や物理的な崩壊によって分解酵素が水に触れると分解が始まる、いわば「生分解開始スイッチ機能」を備えているという。
本研究で開発した酵素内包技術は、元のプラスチックと同等の強度や柔軟性を維持しながら、深海の極限環境下においても生分解性を保持し、かつ生分解速度を大幅に加速させる革新的なアプローチである。この技術は、深刻化する海洋プラスチック汚染の抑制につながると期待される。
今後は、実際の使用環境における長期耐久性や安全性の検証、多様な生分解性プラスチック素材への適用拡大、社会実装に向けた酵素内包プロセスの効率化やコスト低減などを進めていく予定だという。
論文情報:【Nature】Enzyme-embedded polyesters for accelerated biodegradation in the deep sea

