慶應義塾大学医学部放射線科学教室の陣崎雅弘教授らの研究グループは、産学連携により開発した世界初の全身用立位・座位CT(以下、立位CT)の臨床第1号機の有用性を検討してきた。健常者において立ったまま効率よく検査できる有用性は高く、加齢性変化の診断にも有用と考えられることから、11月に開業する慶應義塾大学予防医療センターに立位CTを導入し、健診に活用していく。
この立位CTは、研究グループが構想から基本設計、開発を主導し、慶應義塾大学病院に臨床第1号機として2017年4月に導入、臨床研究を行っていたもの。その結果、従来の臥位(仰向け)で撮影を行うCT検査と比べて複数の有用性があることを明らかにし、38本の科学的英字論文に成果を発表してきた。
これまでの臥位で撮影するCTはがんや動脈硬化といった器質的疾患の診断に有用だったが、立位CTは機能障害の診断への有用性が期待できる。超高齢社会において健康長寿が重視される中で、重要な役割を果たすと考えられる。
具体的な有用性として、「X線検査のように立ったまま出入りして検査ができるので、検査の総時間が従来のCTより短くて済む」、「介助が不要なため、完成非接触・遠隔操作ができ、感染症の患者などでも医療従事者が感染するリスクを回避できる」ほか、「腰痛のように立位で症状がでる患者やヘルニア・臓器脱のように立位で異常所見が明らかになる病態の診断」「荷重がかかる膝関節など運動器疾患の早期診断」「尿失禁などの原因となる骨盤底筋の緩みの判定」などがあげられる。
また、筋肉の形状は、立位と臥位では若干異なるため、研究グループでは、躯幹(胴体部分)や臀部、大腿などの筋肉量を立位で定量化するAIを開発しており、経時的にどこの筋肉が減少していくかを明らかにすることも目指している。
この立位CTは、2023年5月には臨床第2号機が藤田医科大学病院に、11月6日には麻布台ヒルズ森JPタワー6階に開業する慶應義塾大学予防医療センターに導入される予定。
参考:【慶應義塾大学】世界初の全身撮影が可能な立位・座位CTを慶應義塾大学予防医療センターに導入-産学連携の成果-(PDF)