遠隔集中治療(遠隔ICU)とは、医師が医師の診療をビデオ音声通話やコンピュータシステムなどを用いてサポートするDoctor to Doctor(D to D)の遠隔医療のひとつで、急性期の重症患者向け集中治療における遠隔相談サービスである。米国では約28%の病院で導入され、致死率低下や入院期間短縮などの効果が明らかとなっているというが、日本での遠隔集中治療の導入はわずかである。

 今回、東京医科歯科大学医学部学生の森本みずきさんと同大学の山脇正永教授、那波伸敏准教授の研究グループは、日本の医療現場における現場医師の視点から遠隔集中治療のニーズを明らかにするため、遠隔集中治療時の「相談理由」と「現場医師が求めたアドバイス内容」を分析した。手法は、遠隔集中治療を提供しているT-ICU社(現Vitaars社)によって録音された、集中治療を専門としない現場医師(関西中部地方の5つの二次医療機関、計26人)と相談側医師の電話・ビデオ相談の音声データ(2019/12~2021/4、合計70件、計15時間)を逐語記録し、主題分析を行う質的研究とした。

 結果として、現場医師が遠隔相談に至った理由は、専門外の患者を診療する場合や治療方針が複雑化する場合などの「治療や対応に関する個人的因子」と、相談できる相手が現場にいない場合などの「現場医師と他人との関係性因子」が多く認められた。

 また、現場医師が相談側医師に求めたアドバイス内容は、治療に関する助言が最も多く、次いで患者のトリアージと搬送、診断、診断的検査と結果の評価の順に挙げられた。これらが、現場医師が遠隔集中治療に求めるニーズと考えることができる。

 集中治療専門医のリソースが限られている医療現場では、遠隔集中治療が解決策のひとつとなると考えられる。本研究で得られた知見は、わが国の遠隔集中治療及び医療現場の現状と課題を明らかにしたことで、今後の遠隔集中治療の普及と質の向上に必要な情報を提供すると期待される。

論文情報:【BMJ Open】Elucidation of the needs for telecritical care services in Japan: A qualitative study

大学ジャーナルオンライン編集部

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