広島大学大学院の尾崎則篤准教授らの研究グループは、老朽化した下水管(汚水管)を持つ市街地で、雨水流出管でカフェインを検出することによって下水管からの漏出が雨水管の水質に影響を与えている可能性を見出した。

 都市部では現在、生活排水と雨水排水を分離して設計しているが(分流式下水道)、管路の老朽化により、雨水や地下水が家庭排水管に流入、逆に家庭排水が都市の水域に漏出する可能性がある。日本を含む先進国では、これらのインフラが50年以上使用されているため、老朽化と更新が重要な課題となる。

 排水管漏水の診断には、カメラによる直接観察、スポット漏水測定、管の状態監視、トレーサー試験などの方法が開発されているが、漏水率の推定は大きく異なる。これは地下環境の空間的・時間的な変動が影響していると考えられ、これらの影響を広域に確認する研究や調査方法は十分に発展していない。

 研究グループは、比較的最近整備された市街地(10年程度)から40年以上経過した市街地まで、異なる5つの市街地の雨水流出管で、カフェイン、香料物質、多環芳香族炭化水素をトレーサーとしたモニタリングを行った。そして、古い市街地になるほど、特にカフェインにおいて顕著な高濃度を見出した。40年以上経過した下水道区域のカフェイン濃度は、10年経過した下水道区域よりも少なくとも2桁高く、生活廃水の1~10%に相当する濃度に達し、汚水管の漏れが生じていることを強く示唆していた。

 この結果により、近年問題になっている下水管の老朽化が下流域の水質にすでに影響を与えている可能性が指摘される。今回の手法を活かして、見えにくい公共用水域への影響を明らかにしたいとしている。

論文情報:【Environmental Chemistry Letters】High caffeine levels in old sewer system waters revealdomestic wastewater leakage

大学ジャーナルオンライン編集部

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