中部大学の新谷正嶺助教は、東京大学大学院の樋口秀男教授、東京大学発ベンチャーのUT-Heart研究所取締役の鷲尾巧氏と共同で、心臓が周期的に収縮と弛緩を繰り返す拍動を説明できる数理モデルを開発。心拍リズムの恒常性が生まれるメカニズムを解明した。

 心筋細胞の収縮と弛緩はカルシウム濃度の増減に従って生じると考えられてきた。しかし、心筋細胞内の収縮末期におけるカルシウム濃度の減少は遅いのに、心臓は速やかに弛緩・拡張して新たに血液を充填するという一見矛盾した現象の理由は不明だった。これに対して、2015年に新谷助教らは、ドブネズミの一種であるラットの幼若心筋細胞において、カルシウム濃度の増減周期に一致しない周期で筋節が振動を行う熱筋節振動現象を発見した。

 熱筋節振動は、心筋細胞を体温程度に温めたときに顕在化する、収縮の最小単位である筋節の振動のこと。今回、生きた心筋細胞内の筋節長を、高精密に計測できる実験系を構築して熱筋節振動を詳細に調べ、振動のメカニズムをシミュレーションに基づき解明した。その結果、分離心筋細胞では、心臓の心拍周波数と異なる低周期で細胞内カルシウム濃度が変化しているが、熱筋節振動周波数は心拍周波数と同じだった。熱筋節振動は、カルシウム濃度変化とともに振幅や波形を大きく変えるが、周期は一定に保たれるため、筋節にはリズムの恒常性を維持するメカニズムがあることを発見した。

 熱筋節振動の振動数が心拍に近くさらに弛緩速度が速い性質は、全身に血液を送った心臓が速やかに弛緩し拡張して血液を充填させるために重要な性質とされる。今回の成果は拡張期心不全の事前予知などの医療技術の向上に貢献することが期待される。

論文情報:【Scientific Reports】Mechanism of Contraction RhythmHomeostasis for Hyperthermal Sarcomeric Oscillations of Neonatal Cardiomyocytes

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