摂南大学、大阪樟蔭女子大学、宇宙航空研究開発機構(JAXA)の研究グループは、国際宇宙ステーション(ISS)の飲料水供給装置(PWD)から得られた再生水に、ラルストニア属細菌が長期的に優占することを発見した。
ISSでは、空気からの凝縮水や宇宙飛行士の汗・尿由来の水分を組み合わせて再生し、飲料水とするが、再生水は栄養塩に富む場合があり、微生物増殖の可能性がある。飲料水用の処理は十分だが、再生処理装置の細菌が完全には除去されない可能性が示されてきた。
そこで研究グループは、電子顕微鏡観察によりPWD水中の細胞外高分子物質(EPS:細菌が細胞外に分泌する高粘性の高分子混合物で、細菌の接着・保護に役立つ)を直接観察・測定し、PWD水の細菌群集構造の経時変化を解析した。
その結果、ISSの飲料水では3年以上、ラルストニア属細菌(臓器障害を引き起こすことがあるグラム陰性桿菌)が細菌全体の約70%を継続的に占め、飲料水中のEPS粒子数が細菌数を上回ることを確認。平均体積と粒子数から算出したEPS総量は、細菌総量の数十%に達することが初めて示された。
さらに、ISSの飲料水から分離したラルストニア属細菌は、宇宙環境を模倣した微小重力環境では、通常重力環境より細胞濃度とEPS濃度が上昇し、総量が増加した。また、ISS由来株はEPSを産生し、機器の損傷・性能低下や抗菌薬・消毒剤の作用低下を生じるバイオフィルム(細菌の三次元的集合体)を形成しやすいことも発見した。
これらの特性は、ISSの特殊な水環境で、ラルストニア属細菌が適応と長期的生存を実現する重要な要因という。今回の成果は、宇宙居住環境における再生水の微生物学的安全性評価と管理手法の高度化に貢献できるとしている。
