新潟医療福祉大学 心理・福祉学部 心理健康学科の野村照幸教授は、精神疾患のある患者が不調時の対応をあらかじめ本人と支援者で話し合って共有する「クライシスプラン(CP)」について、病状管理ツールではなく、患者のリカバリー(自身が望む人生の実現)を支える手段として活用する可能性を示した。
クライシスプラン(CP)とは、精神疾患のある患者の状態を「安定」「注意」「要注意」の段階に分け、それぞれの状態でどのように対処するかを本人と支援者が話し合いながら作成する計画である。あらかじめ対応方法を共有しておくことで、自身の状態変化に気づきやすくなり、早期対応につなげることができる。
CPは医療観察法に基づく医療の現場で活用されてきた。しかし、単なる病状管理や再発防止の手段としてのみ理解されることには注意が必要だという。海外の先行研究では、CPの活用が本人の同意によらない入院の減少や治療の改善、医療費削減につながる可能性も報告されている。
そこで本研究では、CPを権利擁護とリカバリーの観点から位置づけ直し、その構造や作成方法、一般精神科医療への応用可能性を整理した。
本研究は、CPは病状管理を目的とするものではなく、危機的状況を決断の契機や転換点として捉え、患者と支援者が共に成長するためのロードマップであると論じている。支援者が一方的に作成するのではなく、本人と支援者が対話を重ねながら共につくる「私たち(We)の計画」であり、「共同意思決定(SDM)」を支えるツールでもあるという。
また、CPを有効に機能させるためには、「完璧を目指さない」「本人の納得を重視する」「本人自身の言葉を尊重する」「日常的に活用する」「病状悪化を失敗ではなく成長の機会と捉える」といった視点が重要であることも示した。
CPは司法精神医療の現場で培われた実践であるが、一般精神科医療にも応用できる可能性がある。退院支援や地域移行支援、退院後支援などでの活用を通じて、患者のリカバリーを支える仕組みとして広がることが期待される。
