社会人を中心に、学びの場として選ばれている武蔵野大学通信教育部。なかでも人間科学部人間科学科心理学専攻には、対人援助に関心のある学生が集まっている。卒業生の戸田絵麻さんもそのひとりだ。人生の限られた時間を見据え、心理学を学ぼうと入学を決めた。戸田さんの体験談に加え、心理学専攻学科主任の野口普子教授に、学科の特色や心理学を学ぶ意義などを伺った。

 

残りの時間でやりたいことに挑戦したい。心理学を学んだきっかけ

 2020年に心理学専攻に入学した戸田さん。大病を患い、人生の残りの時間を意識し始めたことが心理学に興味を持つきっかけになったという。

「生死の境をさまよう経験を経て、肉体や時間には限界があるのだと痛感しました。だからこそ今までやりたかったことを思い切ってやってもいいのでは、と考えを巡らせたんです。このとき思い出したのが、以前キャリアコンサルタントの方がおっしゃっていた、『あなたは受容性が高いので心理学系の資格を取得したらどうか』という言葉。心理学への興味を自覚するきっかけになりました。」(戸田さん)

 オフィスワークをしていたとき、職場の人間関係に対して抱いた悩みや疑問も、入学につながった。

「仮面を被ってがんばりすぎ、本音を言えないまま退職した方々を見送るたびに、深いもどかしさを感じていました。誰もが強みを持っているにもかかわらず、それを活かしきれていない。そんな社会に疑問を感じていて、対人支援があったらいいのに、と何度も思いました。そこで、心理学を体系的に学び、対人支援にかかわる力を身につけたいと、入学を決意したんです。」(戸田さん)

 心理学専攻では、戸田さんのように対人援助に興味を持つ社会人が数多く学んでいると、野口先生は語った。

「対人援助に興味がある方が多いので、授業では日常生活や実際の対人援助の場面の中で、大学での学びをどのように活かすことができるかも話題にしています。学生さんは30代から50代の社会人が中心ですが、コロナ禍以降は学びの方法や学びに対する価値観が変化したことで10代、20代の方も増えています。」(野口先生)

 なぜ対人援助や心理学に関心を持つ社会人が多いのだろうか。今の社会において心理学を学ぶ意義を、野口先生は次のように考えている。

「最近は生きづらさを抱えている方を多く目にします。生きにくさを感じたとき、心理学は自分や他者を見つめる上で役に立つ視点になるでしょう。生きにくさの原因をみつめてみたり、他者への手の差し伸べ方を考えたりする際も、心理学の理論やスキルを活用できます。」(野口先生)

通信教育だけれど孤独ではない。モチベーションを支えた学修環境

 戸田さんが入学した2020年は、コロナ禍のまっただ中。外出や人との交流ができず、閉塞感のある日々を送っていたこともあり、心理学専攻の授業に嬉しさを感じたという。

「野口先生のオンライン授業で何十人もの学生が画面上に映ったとき、涙が出るくらい嬉しかったのを覚えています。関東以外の地域はもちろん、海外に住んでいる方もいて。自分は一人じゃない、こんなにも多くの人が、それぞれの場所で同じように頑張っている──そのことを実感したんです。」(戸田さん)

 リアルタイムで実施されるオンライン授業のほか、事前録画した授業の視聴、そして対面授業と、学修方法は多岐にわたる。資格取得に必要な一部授業は対面のみで実施するものの、自分の居住地やライフスタイルに合わせて選択可能だ。ライフスタイルに合わせて学修期間の延長などをしながらじっくり学ぶ学生、短期間で単位と資格を取得して卒業する学生など、各自のペースで基礎から応用まで履修できる。

 学生のモチベーションを保つためのツールも豊富だ。たとえば学修計画・進捗管理ツール「MU-PLAN」。卒業までに必要な単位と、学修の進捗が可視化されている。

 さらに「縁バース」と呼ばれるメタバースキャンパスへの参加も可能だ。いつでも学生同士の交流ができるほか、単位取得やレポートの書き方などに関する情報を提供するイベントも頻繁に実施されている。

「先が見えないとモチベーションの維持は難しいため、卒業までの道のりを視覚化してフォローできるようにMU-PLANを導入しました。通信教育で感じがちな孤独は、縁バースなどで解消します。教員も縁バースでオフィスアワーを設けているので、気軽に相談や雑談に来てください。みなさんのやりたい学びが実現できるよう、教職員が一丸となって環境整備をしています。」(野口先生)

「認定心理士」「産業カウンセラー」資格取得の過程で得たものとは

 心理学専攻では在学中に「認定心理士」と「産業カウンセラー」の資格を取得することも可能だ。

「必要な科目を受講したあとに、認定心理士の資格申請ができます。産業カウンセラーに関しては、資格を認定する産業カウンセラー協会と提携して、理論学修の部分は本学で学んだ科目が読み替えられ、面接の体験学修については学内で養成講座を開講しています。」(野口先生)

「資格取得の支援体制が整っているのは、とても心強かったです。とくに産業カウンセラーは半年から1年ほどかけて学ぶのが一般的ですが、本学では対象科目の単位を資格に必要な学科科目に振り替えられるので時間や学費の負担が減りました。実技に関しても学内で養成講座を受講できるので安心感があります。」(戸田さん)
 
 学内で産業カウンセラーの養成講座が始まったのは3年前から。学生の「やりたい」にさらに応えようと、導入を決めた。

「公認心理師や臨床心理士といった資格は就職にも有利ですが、大学院に進学しなければならないので、多くの社会人の学生さんにとって簡単な選択ではないように思います。対人援助に携わりたい気持ちを持つ学生さんを広く応援する資格として、学部卒で取得できる産業カウンセラーの道も選択できるようにしました。」(野口先生)

 産業カウンセラー養成講座の魅力は、資格を取得できる点だけではない。戸田さんは対面授業の様子を以下のように振り返った。

「在学生には自己学修やスキルアップ、資格取得などを目的に学ぶ20代から50代後半まで本当に幅広い世代の方がいて、授業では会社のような上下関係がなく、自然体で本音の会話ができました。
実は提出したレポートに、赤字でびっしりと先生からのコメントが入っていて落ち込んだことがあって。でも打ち明けてみると周りの学生も同様だとわかったんです。
学修の進捗や、課題の克服方法を共有したことで前を向けました。今では、その経験も自分の成長の糧になっていると感じています。」(戸田さん)

「赤字がたくさん入ること自体は、落ち込まなくていいと思います。そもそも最初からレポートが書けるなら、大学に来る必要がありません。教員としては、レポートの改善点について意図が誤解なく伝わるよう言葉に気を配りつつ、卒業までに大学生としてより良いレポートを書く力が身につくようメッセージも込めています。」(野口先生)

「おかげで物事を考察する力が鍛えられました。現場に出ても考察や分析の力は求められるので、レポートで課題を乗り越えておいて本当によかったと感じています。」(戸田さん)

後輩のためになりたい。心理学専攻を支える「縁」

 戸田さんは卒業後、武蔵野大学通信教育部のアカデミック・アドバイザーとして働いている。縁バースで学生からの相談を受けたり、在学中の気づきを活かして情報提供の冊子を作成したりと、後輩のサポートをする仕事だ。

「学修を終えてからも、卒業生と在学生、そして教員のつながりが続いています。私が受け取ったバトンを、ひとりでもいいので在学生に渡せたらと思っています。」(戸田さん)

 後輩のために力を貸しているのは、戸田さんだけではない。歴代の卒業生も、新入生ガイダンスや学生相談などのイベントに積極的に参加してくれるそうだ。

「卒業生も含め、学生さんたちが本当に温かくて。先輩の話が聞けてよかったと感じた在学生は、自分が卒業したら後輩のためになりたい、と思ってくれています。人とのご縁がずっとつながっている大学です。」(野口先生)

 温かな縁が、安心して学べる環境につながっている。そんな武蔵野大学通信教育部心理学専攻は、人生の選択肢のひとつになると戸田さんと野口先生は語った。

「社会人になると自分を内観する時間を持つことが難しいですが、大学での学びを通して、私は自分自身を客観的に振り返ることができました。もし今、「なんとなく生きづらい」「本当の気持ちが揺れている」と感じている方がいたら大学で学ぶことも選択肢のひとつだと思います。少しでも通信教育部で学んでみたいと感じたならば、その思いを大切にして一歩を踏み出していただけたらと思います。学びたいと思ったときこそが、学びのタイミングです。」(戸田さん)

「これまで皆さんが感じていた疑問に対して、学生さんの入学年次にもよりますが1~4年間かけて答えを見つけられる。それが本学の心理学専攻です。学生さん全員の想いに応えられるように準備をしておりますので、入学をご検討いただければと思います。」(野口先生)

武蔵野大学 通信教育部 心理学専攻学科主任 

野口普子教授

2004年3月、武蔵野女子大学人間関係学部人間科学科卒。2010年3月、武蔵野大学大学院人間社会・文化研究科人間社会専攻修了 博士(学術)。国立精神・神経医療研究センターでの勤務を経て、2014年4月より武蔵野大学通信教育部人間科学部の教員に。専門は臨床心理学。

心理学専攻卒業生 戸田絵麻さん

2020年入学、2024年卒業。在学中に認定心理士と産業カウンセラーの資格を取得した。卒業後は武蔵野大学通信教育部のアカデミック・アドバイザーとして勤務している。

 

武蔵野大学 通信教育部

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