月経前症候群(以下、PMS)は、月経前3~10日のあいだ不快な精神・身体症状が続き、女性のパフォーマンスを妨げる疾患である。今回、近畿大学東洋医学研究所の武田卓所長を中心とする研究チームは、PMS患者の腸内フローラ(腸内細菌叢)では、抗うつ作用への関与が期待できる「酪酸産生菌」や脳内神経伝達物質を産み出す「GABA産生菌」が減少しているという特徴を持つことを世界で初めて明らかにした。

 様々な疾患との関連性が注目される腸内フローラだが、PMS患者における腸内フローラの検討はこれまで実施されてこなかった。PMSはうつ病と多くの共通点が見られており、うつ病を含む精神疾患の分野でも、腸内フローラとの関連性が研究されていることから、本グループはPMSの新たな治療ターゲット候補として腸内フローラに着目した。

 中等度以上のPMS患者とPMS症状の自覚がない健常者に次世代シーケンスメタゲノム解析を実施し、それぞれの腸内フローラを解析した。その結果、PMS患者と健常者は異なる腸内フローラを示し、PMS患者では抗うつ作用が期待できる酪酸産生菌や、PMSの病態生理にも関連するとされる脳内神経伝達物質を産み出すGABA産生菌が減少していることを認めたという。これらの腸内細菌は、PMS発症と関連する可能性があるとしている。

 本研究で明らかとなった知見をもとに、PMS診断マーカーの開発や、食事療法、プロバイオティクス、プレバイオティクスといった腸内フローラに焦点を当てた治療法の開発が期待される。PMSの標準治療である「低用量ピル」や抗うつ薬である「選択的セロトニン再取り込み阻害薬」は、一般的にあまり受け入れられていない現状もあるため、簡便で体への負担が少ないPMS新規治療法の提案につながる画期的な成果である。

論文情報:【PLOS ONE】Characteristics of the gut microbiota in women with premenstrual symptoms: a cross-sectional study

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