ヒトの生物としての根源的な特徴は、直立二足歩行を行うことにある。では、直立二足歩行の前は、どのように運動していたのだろうか?――その姿を類人猿から想像するかもしれないが、必ずしもそれが正解でないことを今回、京都大学大学院理学研究科の森本直記助教と中務真人教授、スイス・チューリッヒ大学の研究者からなる国際研究チームが示した。

 ヒトに近縁なチンパンジーやゴリラなどの類人猿は、手のひらを地面につける「普通のサル」とは異なり、「ナックル歩行」という指の背を地面につく特徴的な四足運動をする。ヒトの祖先はナックル歩行を経て二足歩行へと移行したとする「ナックル歩行仮説」がこれまで有力であったが、これを検証するため、同グループは運動機能の要となる骨格形態の発生パターンをX線CTデータにより解析した。その結果、チンパンジーとゴリラの大腿骨の発生パターンは著しく異なることが分かった。これは、チンパンジーとゴリラのナックル歩行は普通の四足の共通祖先からそれぞれ独自に進化したものであることを示唆しており、ヒトの二足歩行も普通の四足の類人猿から進化したことを裏付ける画期的な成果といえる。つまり、ヒトの祖先はナックル歩行をしていなかったと考えられる。

 さらに、ヒトは長い脚を実現するために、発生を「進める」のではなく、「遅らせている」という、他の霊長類にはない特殊な発生パターンを持つことも明らかになった。

論文情報:【Scientific Reports】Femoral ontogeny in humans and great apes and its implications for their last common ancestor

京都大学

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