厚生労働省に設置されている審議機関・社会保障審議会の部会は生活困窮者自立支援制度と生活保護制度の見直しに関するこれまでの議論の中間まとめをし、生活保護を受けながら大学進学ができるようにする政府方針の変更を見送る方向を示した。

 厚労省によると、中間まとめは「生活に困窮する世帯のすべての子どもが持つ大学進学の希望をできるだけかなえるようにすることは重要」としながらも、一般世帯にも奨学金やアルバイトで学費や生活費をまかなう学生がいるうえ、仮に認めれば相当数の学生が保護対象になりうるなどとして「慎重に検討する必要がある」とした。

 生活保護世帯の大学、短期大学、専門学校などへの進学率は2021年で39.9%にとどまっている。近年増加傾向が続いているとはいえ、全世帯平均の83.8%を依然、大きく下回っている。

 生活保護を受けながらの大学進学を認めないとする現行の方針は、旧厚生省が1963年に出した通知を根拠に約60年続いている。しかし、貧困の連鎖が続くなどとして見直しを求める声も上がっていた。

 これまで見直しを強く求めてきた日本弁護士会連合会は中間まとめの公表に先立ち、「生活保護を利用していない一般世帯との均衡を図る必要があり、生活保護世帯の子どもの大学進学を認めるべきだ」とする小林元治会長の声明を発表している。

参考:【厚生労働省】生活困窮者自立支援制度及び生活保護制度の見直しに関するこれまでの議論の整理(中間まとめ)を公表します
【日本弁護士連合会】生活保護世帯の子どもの大学等進学を求める会長声明

大学ジャーナルオンライン編集部

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