学術出版社のシュプリンガーネイチャーは、2023年に日本において導入した革新的なパイロット転換契約に参加する研究大学コンソーシアム(RUC)加盟大学が10校から21校に増加したことを発表した。2024年には日本国内の比較的小規模な研究期間を対象にした新たな転換契約モデルJ-SPRINTA(ジェイ・スプリンタ)も立ち上げる。
パイロット転換契約には、東京大学、京都大学、大阪大学、東北大学、および名古屋大学などの国立大学、早稲田大学、東京医科大学、および立命館大学などの私立大学、ならびに沖縄科学技術大学院大学といった大学院大学が参加している。RUC加盟大学に所属する研究者は、シュプリンガーネイチャーが出版する2000誌以上のハイブリッドジャーナルでOA出版するための資金援助を受けることができる。
また2024年に立ち上げるJ-SPRINTAでは、年間5報以上の論文を出版する見込みのある機関を対象に、シュプリンガージャーナルパッケージの購読の有無にかかわらず、RUC以外の機関も3年間の転換契約に参加できる。これにより研究者は、同社のハイブリッドジャーナルにおいてOA出版費用の援助を受けられるほか、比較的安価な追加費用でジャーナルへのアクセスも可能になり、従来と比較して費用効率が高くなる。
2024年中に参加機関に所属する研究者が出版する研究論文をすべて、または一定数をオープンアクセス(OA)化する機会を提供することで、各機関に適した速度でOAに移行できるようにすることで、年内にはパイロット転換契約とJ-SRPINTAをあわせ、合計1800報以上の論文がOA出版される予定。これは、転換契約を通じて2023年にシュプリンガーネイチャーから出版された日本の研究機関によるOA論文数の約2倍に相当する。また、このOA論文の出版数は、大学図書館コンソーシアム連合(JUSTICE)に加盟する大学の研究者がシュプリンガーネイチャーと出版する年間OA論文の約30%を占める。
シュプリンガーネイチャー・ジャパンのアントワーン・ブーケ代表取締役社長は、「日本におけるパイロット転換契約の最新データによると、OA論文は、非OA論文に比べて、平均で6倍以上ダウンロードされ、Altmetricのアテンション・スコア(注目度)は約8倍高く、これは当社の世界平均と同等かそれ以上です。日本のニーズに合わせたこの枠組みによって、より多くの研究者が自身の研究をOA出版できるようになり、日本の研究の世界的な認知度が高まることを喜ばしく思います。日本の研究者は、シュプリンガーネイチャーのジャーナルへの持続的なアクセスが可能になるとともに、自身の研究の被引用数およびダウンロード数の増加という恩恵を受けることができます」とコメントしている。
参考:【シュプリンガーネイチャー】シュプリンガーネイチャー、日本の大学との転換契約を拡大し、オープンアクセスへのさらなる移行を推進