東京大学の矢後勝也講師は、豪州モナシュ大学、米国フロリダ大学、ドイツ統合生物多様性研究センター、仏国ピカルディ・ジュール・ヴェルヌ大学の研究員らによる国際共同研究に参画し、世界最大規模の解析により、世界のチョウ類の約10種に1種で分布域が変化し、その約8割が気候変動や異常気象と関連していることを明らかにした。
気候変動や土地利用の変化により、多くの生物が適した環境を求めて分布域を移動している。しかし、従来の研究は欧州や北米など温帯地域に偏り、生物多様性が最も豊かな熱帯地域の実態が不明だった。そこで研究グループは、気温変化に敏感なチョウ類の世界的な分布変化を解析した。
研究では、世界105か国、1758種・6182件の分布変化記録を収集・解析。チョウ類では最大規模の解析で、565編の学術論文、15言語で出版された地域文献、49か国68名の専門家による知見を統合した。
その結果、世界のチョウ類の約10%で分布域が変化し、その約8割は気候変動や異常気象と関連していることが明らかになった。分布域を拡大した種は80%に達した一方で、27%では分布域の縮小、22%では標高方向への移動も確認された。
また、チョウ類の分布変化は欧州や北米だけでなく、チョウ類が分布する各大陸で進行していた。特に、熱帯地域の分布変化が明らかになり、英語文献のみに依存した解析では世界的な分布変化の実態を大きく過小評価する可能性があることも示された。
研究で構築したデータベースや解析手法は、チョウ類以外の昆虫類や脊椎動物など幅広い生物群にも応用可能という。今回の成果は、国際的な保全政策や、気候変動時代における生物多様性の保全・再生に向けた科学的基盤になるとしている。
論文情報:【nature ecology & evolution】Extensive climate-induced range shifts in butterflies across the globe
