広島大学大学院医系科学研究科免疫学の研究グループは、運動時に骨格筋で働く分子CaMKIIγ/δが、トレーニングによる持久力向上を支えていることを示した。
骨格筋は、運動を繰り返すと、長く動き続けられるようにエネルギーの作り方を変えて適応する。CaMKIIは、運動時に活性化し、筋肉の収縮で生じるカルシウムの信号を受け取ることがわかっているが、持久力や筋肉のエネルギー代謝にどのように関与するかは不明だった。
本研究グループは、CaMKIIのうち骨格筋で多く働くCaMKIIγとCaMKIIδを欠損させたマウスを用いて、これらの分子の働きを調べた。
骨格筋だけでCaMKIIγ/δを欠損したマウスと正常なマウスに、それぞれ4週間の持久力トレーニングを行わせて比較したところ、正常マウスはトレーニング後に最大走行時間が平均で約25%向上した。一方、CaMKII欠損マウスの走行能力はほとんど向上しなかった。さらに、CaMKII欠損マウスでは、エネルギー産生や糖の分解に関わる遺伝子群の働きが低下していたほか、内部の膜構造が乱れたミトコンドリアが増え、酸素消費量も低下しているなど、代謝機能が損なわれていた。
これらの結果から、CaMKIIγ/δはミトコンドリアの構造と働きを保ち、持久力トレーニングに必要なエネルギー代謝の適応を支える重要な分子であることが示唆された。
本研究により、CaMKIIγ/δが、運動による筋肉のエネルギー産生を活発にし、持久力の向上を支える「運動効果のスイッチ」の一つである可能性が示された。この発見は、運動によって体力が高まる仕組みを分子レベルで理解する手掛かりとなる。今後、同じ仕組みが人の筋肉でも働くかを確かめる必要があるが、将来的には、CaMKIIγ/δの機能を利用して運動の効果をより高める方法や、加齢や疾患などで十分に運動できない人の運動能力を保つ薬およびリハビリテーション法の開発につながることが期待される。
