ゲノム編集で水産物の品種改良を進める京都大学と近畿大学発の企業・リージョナルフィッシュ株式会社は、肉厚に改良したマダイをゲノム編集食品として厚生労働省、農林水産省へ届け出た。京都大学と近畿大学が開発したもので、血圧上昇を抑える成分を多く含むトマトに次ぐ2例目。ゲノム編集の動物食品としては世界初になるという。
近畿大学によると、肉厚に改良したマダイは受精卵の段階で筋肉細胞の成長を抑える遺伝子をゲノム編集で破壊した。成長すると一般のマダイに比べ、筋肉の量が最大1.6倍、平均1.2倍になり、可食部が大幅に増えている。
従来の品種改良で実現しようとすると、何世代にもわたって交配と繁殖を繰り返す必要があるが、ゲノム編集だと数年で実現する。外部から遺伝子を導入しているわけではないため、安全性は品種改良と同等とされ、厚労省の専門家会議で問題がないと判定された。
名称は「22世紀鯛」。自然界と隔てるため、陸上の水槽内で養殖する。クラウドファンディングで資金提供してくれた人に昆布締めや鯛めしにして190食分を10月から送る予定だが、当面は一般販売せず、量産化を急ぐ。
リージョナルフィッシュは京都大学大学院農学研究科の木下政人助教、近畿大学水産研究所の家戸敬太郎教授らを創業者として2019年にスタートした。日本の水産業は1988年の水揚げ高1,278万トンが2018年に442万トンまで減るなど、衰退の一途をたどっており、ゲノム編集技術を活用した養殖に注目が集まりそうだ。
参考:【近畿大学】ゲノム編集技術を利用して開発した「可食部増量マダイ」、厚生労働省及び農林水産省への届出完了 国の手続を経た、世界初のゲノム編集動物食品として「可食部増量マダイ」の上市開始