電気通信大学と三菱マテリアル株式会社中央研究所のグループは、ほぼ100%の熱回収を可能とする画期的な伝熱管の開発に成功した。

 現在、日本国内の1年間の排熱は総発電量の約2.4%にも相当しており、こうした排熱を有効活用するためには、伝熱管を使って高効率に熱を回収し、他のエネルギーに変換して利用することが期待されている。

 伝熱管には多孔質体を使うこと、さらに、伝熱管と多孔質媒体を焼結することで、伝熱性能を向上できることが知られてきた。そこで、本研究者らは、アルミニウム製の管内に同一素材の繊維体を充填した特殊な多孔質伝熱管を作製し、通常のアルミニウム製伝熱管との比較実験を行った。

 実験の結果、通常の長さ150mmの伝熱管では、入口温度を200℃とし、伝熱管の周囲を2℃に冷却した場合、伝熱管の出口から出てくるのは130℃程度の熱風であったのに対し、わずか20%の空間割合で繊維体を25mm充填しただけの伝熱管では、2℃の冷風が排出されたという。アルミニウム繊維体を充填し、伝熱管の長さを短くすることで、伝熱管の入口と出口に約200℃もの驚異的な温度差が生じ、ほぼ100%の損失のない熱回収に成功したことになる。この熱交換効率は、従来比20倍程度にもなるという。

 管と繊維体がともにアルミニウム製のため、同一材料で開発が容易であることに加え、軽量で持ち運びしやすいといった利点もある。設置コストの大幅な削減が見込めることから、現在廃棄されている工場排熱や、約-200℃で輸送されるLNG(液化天然ガス)や液化水素の冷熱回収などに利用が期待できる。

 本研究では、伝熱管の内径やアルミニウム繊維体の太さや長さ、空間割合を変えて実験を繰り返すことで、この伝熱管を使った機械機器の設計に必要となる摩擦圧力損失を見積もるための整理式を導くことにも成功した。カーボンニュートラルやサステイナブルな社会の実現に大きく貢献する技術となることが期待される。

論文情報:【Applied Thermal Engineering】Experimental investigation into the heat transfer and pressure drop performance of sintered high porosity media

大学ジャーナルオンライン編集部

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