簿記の大学対抗競技会として知られる全国大学対抗簿記大会において、大会史上初となる9連覇を達成した千葉商科大学の会計教育研究所が運営する「瑞穂会」。会計教育実践の場である「瑞穂会」は、この偉業を達成する原動力となり、毎年、実社会で即戦力として活躍しうる職業会計人や高等学校教員を輩出し続けている。

 

受講料は無料。専任教員の指導のもと、
資格取得に向けた継続性のある学習を実現していく

 日本商工会議所簿記検定試験(日商簿記検定試験)での資格取得をめざす学生たちを支援する勉強会として、瑞穂会が開設されたのは平成18(2006)年5月のこと。当時の学長、加藤寛氏の主導のもと設置が進められた。

 大学の校歌にある「瑞穂も饒(ゆた)けき」という歌詞から命名された同会は、会の創設にも大きくかかわった、大学OBで簿記の専門家である岩本慶道氏が掲げた、「継続することの大切さ、困難を乗り越える強い精神力、人に対して感謝の心を身につけさせる」という指導理念を継承しながら学生指導を展開。現在までに多くの日商簿記1~3級取得者や税理士試験合格者(科目合格者も含む)を輩出している。

 その取り組みは、「毎回の合格率においても、全国平均を大きく上まわる成果を挙げており、開設以来、多くの職業会計人や高等学校教員を社会へと送り出しています」と桝岡源一郎副学長が語るように、「有用の学術」、つまり実学尊重を建学の精神に掲げる千葉商科大学だからこそ成し得ることのできた、実践的な学びといえるだろう。

 こうして誕生した瑞穂会において特筆すべきなのは、年3回開講している日商簿記検定対策講座及び税理士試験講座が、同大の学生であれば無料で受講できる点である。
 一般的に資格取得をめざす学生は、大学に通いながら、専門学校に通うなど、いわゆるダブルスクールをしなければならないのが現状である。しかし、同会では教材費のみ支払えば受講できることから、経済的に苦しむ学生でも資格取得をめざすことが可能だ。

 これに加えて、講座が学内で開かれているため、キャンパスの外に出かける手間がかからず、その分の時間を学習に使える。資格取得に関係する資料などを揃えた自習室を、学生は自分の好きな時間帯に利用できるなど、時間的な面からも学生を支援している。

 また、桝岡副学長が「教室に常駐し、指導にあたる専任教員たちは、過去に日商簿記検定1級や税理士試験に合格経験があることはもちろん、現在も学生と同じ立場でくり返し検定や試験に挑戦しながら、自らの知識を常にブラッシュアップし続けています」と語るように、最前線の知識と経験を練磨し続けている専任教員の存在が、瑞穂会のもうひとつの特長といえる。

 実際の講義は、そうした高い知識と豊富な経験を有する専任教員のもと、大学の講義に影響が出ないことを大前提に、基本的には月~金曜日の4・5時限と土曜日の1~4時限、日曜祝日や長期休暇期間中の9~17時に、専用の教室を利用して実施(新型コロナウイルス感染拡大期間中はオンラインによる授業を実施)。その内容は、簿記・会計の初学者を対象とした講座と、日商簿記検定1級や税理士試験等の資格取得をめざす学生を対象とした講座を基本に、検定試験に合格できなかった学生を対象としたフォロー講座も設置するなど、個々の学生の状況に応じた細やかな指導が展開されている。

 こうした学習活動が、全国大学対抗簿記大会で史上初となる9連覇の偉業へとつながっていくわけだが、「大会への参加は資格取得に向けたテストの一環であって、目標はあくまで検定試験での合格です」と、渡邉圭専任講師。さらに、その講義方針について「学生たちに継続性のある学習を身につけさせると同時に、先輩が後輩に、あるいは学生同士が互いに教え合い、切磋琢磨し合う学習環境を整備していくことを大切にしています。同じ目的をもつ学生が時間を共有し、グループ活動により協調性を養いながら互いの学習意欲を向上させることにより、課題発見能力や課題解決能力を育んでいくことをめざしています」と語る。同会は資格取得すらも通過点と想定している。資格取得をめざす学習の過程で、実社会において即戦力として活躍しうる人材育成を最終目標としている点は、大きく評価されるべきポイントといえるだろう。

 現在、瑞穂会では、毎年4月・6月・12月に説明会を実施しているが、これまでの取り組みの成果として、説明会への参加者が増加していることはもちろん(Microsoft Teamsを用いた今年度のオンライン説明会には400名近い学生が登録)、その受講者もここ5年間、右肩上がりで増加中だ。近年では、受講者の約半数が普通科高校出身者で占められており、同大の商経学部以外からの受講者も増加傾向にある。桝岡副学長は、「現在は基本的に千葉商科大学の学生と付属高校の学生を対象に講座を開設していますが、高大連携の一環として、これを近隣の高校生へも広めていければと思います」と語る。

 以上のように、学習意欲に富んだ学生たちに大きく門戸を開き、資格取得を含めて、実社会に求められる人材を育てていく同会の取り組みは、今後も大きく発展していくことが確実といえるのではないだろうか。

 

大学ジャーナルオンライン編集部

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