麻布大学、名古屋大学、愛知医科大学の共同研究グループは、マウスにおいて胚着床を誘導できる新たな化合物を発見し、その有効性を確認した。

 近年、ヒトの不妊症や産業動物(ウシなど)の受胎率低下が大きな社会課題となっている。通常、子宮に到達した胚(受精卵)は、子宮から分泌されるサイトカインのはたらきで着床するが、これまでサイトカインに代わって人工的に胚着床を誘導できる薬剤は報告されていなかった。

 研究グループは、マウスにおいて転写調節因子STAT3を活性化し、着床反応を進行させるサイトカイン「白血病阻止因子(LIF)」に着目した。インターフェロン様活性を持つ新規化合物「RO8191」はSTAT3を活性化できるため、LIFの代わりに胚着床を誘導できるかを検証した。

 まず、ホルモン制御によって着床時期を調整した着床遅延モデルマウスにRO8191を投与したところ、子宮上皮細胞と間質細胞でSTAT3が活性化し、およそ8割のマウスで胚着床が誘導された。

 さらに、子宮上皮細胞でLIFの受容体であるLIFRとGP130、そしてSTAT3をそれぞれ欠損させた3種類の遺伝子改変マウスを作出し、RO8191の効果を評価した。これらのマウスは、LIFが存在してもシグナル伝達が行えないため胚着床不全による不妊となるが、RO8191投与によりLIFR欠損マウスでは子宮上皮細胞と間質細胞のSTAT3が活性化し、胚着床が成立して妊娠が維持されることが確認された。GP130およびSTAT3欠損マウスでも、一部の着床関連反応が促進された。

 これらの結果から、薬剤投与によって胚着床を誘導できることが初めて実証された。本研究成果は、不妊症の新たな治療法の開発や、動物医療分野における受胎率向上に貢献することが期待される。

論文情報:【Scientific Reports】RO8191, a new compound for initiating embryo implantation in mice

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