麻布大学、理化学研究所、鹿児島大学、昭和薬科大学、東京大学、日本動物高度医療センター、ITEA株式会社東京環境アレルギー研究所の共同研究グループは、大規模研究によりイヌCYP2B6における薬物代謝の個体差や犬種差が遺伝的要因によって規定されることを初めて明確に示した。
共同研究グループは、119犬種6344頭のゲノムデータを網羅的に解析し、イヌの主要薬物代謝酵素であるチトクロームP450(CYP)2B6(CYP2B6)の遺伝子における11種類の遺伝的バリアント(遺伝子の塩基配列に生じた変化)を同定し、その遺伝子機能への影響を評価した。
これらのバリアントのうち275番目のグルタミン酸が欠失するスプライスバリアントや、74、83、145、151番目のアミノ酸が置換するミスセンスバリアントは、麻酔薬プロポフォールの代謝能に影響を及ぼすことを実験的に確認。また145番目のアミノ酸置換を伴うバリアントでは、還元酵素部位に構造的変化を生じ、代謝活性を低下させることが示唆された。
今回の研究により、犬種間で薬の効き方や副作用リスクが異なる分子基盤を解明。これまで経験的に行われてきた獣医療での薬剤投与を、遺伝情報に基づいて個別化できる道を開くものであり、犬種に応じた安全で効果的な治療設計に応用が可能という。
さらに、ヒトとイヌのCYP2B6を比較することで、薬物代謝に共通する普遍的な仕組みと、種特異的な代謝特性の両方を明らかにし、ヒト・イヌ双方の薬物治療の安全性向上が期待できる。今後は、他のP450遺伝子も統合的に解析し、イヌの薬理遺伝学データベースを構築することで、将来的にヒトと伴侶動物の双方における精密医療の実現に貢献できるとしている。


