麻布大学と富山大学の研究グループは、シナプスの形成と再編を担う遺伝子の持つ「マイクロエクソン」の使い方が、感覚、運動、情動、社会性、学習、記憶などの広範な行動調節の鍵となることを発見した。
マイクロエクソンは、3-27ヌクレオチドから成る極めて短いエクソンで、選択的スプライシング※によって取捨選択されてmRNAに取り込まれ、タンパク質の機能を調節する。これらの微小ゲノム素子は、脳の発達や高次脳機能への関与が示唆されていたが、脳内での使われ方や個体レベルでの役割は不明だった。
研究グループは今回、シナプスの形成と再編を担うシナプスオーガナイザー遺伝子Ptprdは3つのマイクロエクソンを持ち、遺伝的なプログラムと環境依存的なプログラムによって選択的スプライシングを受けることを発見した。
Ptprd遺伝子のもつ3つのマイクロエクソンのうちの1つは4アミノ酸のペプチドをコードし、このマイクロエクソンの遺伝的な選択的スプライシングプログラムを操作したマウスは、感覚、運動、情動、社会性など広範な行動に大きな異常が出たが、学習や記憶には異常は認めなかった。一方、Ptprd遺伝子のマイクロエクソンの環境依存的な選択的スプライシングプログラムを操作したマウスは、感覚、運動、情動、社会性に関連した行動に目立った変化は認めなかったが、ある種の学習と記憶のみに異常が出た。
以上から、動物に固有の行動パターンや学習記憶等の経験に依存した行動パターンの変化がPtprd遺伝子のわずか4アミノ酸のペプチドをコードするマイクロエクソンの取捨選択によって調節されることが明らかになった。
今回の知見は、精神疾患や神経発達障害の発病機構の解明に加え、高度で複雑なヒトの脳機能や個性を作り出す仕組みの解明につながることが期待されるとしている。
※転写後のmRNA前駆体でイントロンが除去され、どのエクソンが使用されるかにより複数の異なる成熟mRNAが生成されること

