今後に向けて~持続可能性の視点から~

 そもそも近年のセンター試験では、例えば、教科書で見慣れている2次元の図を3次元的に表現して思考させる、本質的かつ工夫した出題がされるなど、問題自体が授業改善に示唆を与えるような、いわゆる練られた思考型問題が作成されていた。また、共通テスト試行テストは、思考型試験の実現に向けて、さらに多くの工夫が感じられた。しかし共通テスト本試験と進むにつれ、作問の限界を感じざるを得ない結果となった。

 国が目指す趣旨に基づき、マークシート方式という条件で水準を担保しながら問題作成し続ける困難さは、極まっているのではないか。マークシート方式で思考力を問う問題の作成は、果たして持続可能なのだろうか。常に新規性に富んだ思考型の問題を提供し続けるには率直に限界を感じる。関係者の想像を絶する努力により思考型の問題を作成したところで、すぐに各予備校等がこぞって対応を考え、対策問題を作成してくる。まさにイタチごっこなのだ。それに高等学校も受験生も試験対策に終始しては、本来の趣旨から大きくずれる。思考型問題もパターン化された知識再生問題へと変化していく。この循環では、共通テストを導入した趣旨が損なわれるのは目に見えている。

 諸外国では、国家の維持・繁栄のために、極めて丁寧な大学入試が実施されている。受験生の知識だけではない能力を見据えるために記述型試験を行っている国も多い。

 我が国の未来を託す受験生が向き合う妥当な思考型テストとは何か、さらなる真摯な議論が求められよう。

 

 

東洋大学食環境科学部 教授
後藤 顕一 先生
東洋大学 教職センター長、日本化学会 教育・普及副部門長 学校教育委員長 埼玉県立高校教諭、埼玉県高校教育指導課指導主事を経て、2009年より2017年3月まで国立教育政策研究所 教育課程研究センター 基礎研究部 総括研究官 2017年4月より現職。

 

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