2027年度に創立130周年を迎える和洋女子大学。2026年度からは新たにAIライフデザイン学部AIライフデザイン学科を開設するなど、先進的な分野を反映した教育に積極的に取り組み続けている。長い歴史を持つ女子大学として、和洋女子大学はこれからの社会にどう向き合っていくのだろうか。2026年度に新学長に就任した、熊谷優子学長にお話を伺った。
和洋女子大学 熊谷優子学長
“人を支える「心」と「技術」”の重要性は変わらない
「和洋女子大学が約130年培ってきた教育は、社会から求められていると感じています」と語る熊谷学長。「和魂洋才、明朗和順」を建学の精神に据える同大学では、“人を支える「心」と「技術」を持って行動する女性”を育成してきた。
創設者である堀越千代は、女性教育にいち早く重要性を見いだした人物。家庭や地域など、さまざまなコミュニティで女性たちがより幸せに生活するための力を育てようと、1897年に和洋女子大学の前身となる「和洋裁縫女学院」を設立した。
「堀越千代は良妻賢母的な側面だけでなく、これから女性が社会に進出することも見据えた教育を考えていました。そこで当時は数少ない女性の職業だった教員を養成する課程や、和服が着られていた時代においては先進的だった洋裁技術に関する教育を取り入れたのです。時代の流れを反映し、先進的な教育を取り入れる、という姿勢は今も変わりません。2026年4月にAIライフデザイン学部AIライフデザイン学科を開設したのも、その一例です」
2026年4月にAIライフデザイン学部AIライフデザイン学科を開設
さらに熊谷学長は、“人を支える「心」と「技術」”を身につけるためには、自分に自信を持つことが重要だと語った。自信は自分の幸せを感じることにもつながる。また、心が満ち足りていればこそ、多様な人々や社会に思いを寄せ、理解しようとする姿勢が自然と生まれるという。
「本学の卒業生は共感力や協調性、そして周りをよく見て意見を尊重する力が強いと、企業の方からも評価をいただいています。そうした力は建学当時だけでなく、今の社会でも求められているでしょう。それぞれのコミュニティで人々とコミュニケーションをとり、周りをうまくまとめていく。そうした意味でのリーダーシップを育む教育を続け、地域のウェルビーイング向上にも貢献していきます」
自信は「好き」から始まる。新ブランドメッセージに込めた想い
2027年度に学園創立130周年を迎えるにあたり、和洋学園では新たなブランドメッセージを打ち出した。それが「和洋女子物語」だ。「和洋学園の物語は、女子一人ひとりの『好き』から始まります。」とあるように、学生の「好き」を尊重し、自分らしい未来へと歩む手助けをしようという姿勢が伝わってくる。このブランドメッセージには、約130年続けてきた教育を今後も維持していく、という意志が込められているそうだ。
2027年度に学園創立130周年となる和洋学園のブランドメッセージ「和洋女子物語」
「初めから明確な目標を持って入学してくる学生ばかりではありません。なかには自分には何ができるのかな、と自分の道(『好き』)を探している学生もいます。そういった学生には、ぜひ本学で自分の『好き』を見つけて伸ばしてほしいです。『好き』は自分に自信を持つ起点にもなります。本学には自分の『好き』をみつけることができる環境があることを、ブランドメッセージに込めました。大学生活で気づいた『好き』の学びの中で成長し、自立した女性として誇りを持って行動し、社会に貢献することができる。そんな人になってほしいと思っています」
「好き」を見つけるチャンスは、学内外に多く用意されている。各学部学科の授業、教員との交流、地域でのプロジェクト活動などさまざまだ。
「本学の教員は、この学生を伸ばすためにはどうしたらいいか、を本気で考えている先生方です。迷っているときは背中を押したり、方向性のヒントを与えたりしています。こうした教育は、今後も続けていきます」
伸び伸びと挑戦できる環境を。女子大学としての意義
全国的に見れば、共学化や閉校などで女子大学は数を減らし続けている。それでも和洋女子大学は、今後も「女子大学」であることにこだわり続ける方針だ。
「とくに自分に自信のない学生にとって、ジェンダーバイアスがない環境はまだまだ必要です。女性だからこれはしてはいけない、などの押さえつけがないからこそ挑戦できることはありますし、その経験が成長を促します。だからこそ、今後も和洋女子大学は女子大学として教育を続けていきます」
もちろん卒業後は、男性や異なる世代の人々と接する機会が増える。しかし大学時代に身につけた力や自信は環境が変わっても通用すると、同大学の卒業生は証明してきた。
「卒業後は発言や挑戦ができない人になってしまうかというと、そうではありません。卒業生たちはきちんと成長して、社会に貢献してくれているのだと企業アンケートからもわかります」
地域とのつながりを、より強固に
学生の成長の場として、産官学連携に力を入れているのも和洋女子大学の特長だ。千葉県市川市や浦安市とは包括連携協定を締結。教育はもちろん、防災、スポーツ、まちづくりなど幅広い分野で協力してきた。学生はゼミなどを機に、各教員が担当するプロジェクトに参加。これまでも国際学部の学生が町の活性化に取り組んだり、家政学部の学生が地域の製パン会社と商品開発を行ったりと、多岐にわたる活動を行ってきた。
さらに2026年4月には、市川市を拠点にするアメリカンフットボールチーム「BLUE THUNDERS」とパートナーシップを締結した。これまでもグッズ製作等で協力をしてきた和洋女子大学だが、今後はさらに「スポーツ×教育×地域創生」のプロジェクトに力を入れる予定だ。
「地域の方と接することで、その地域にどういった課題があるのかを考えられます。解決策はすぐに見いだせるわけではありません。しかし課題に気づくことや、答えを模索する経験自体が、学生たちの学びになっています。本学で成長した学生たちが地域の未来を描いていく。そんな活動につなげていきたいです」
和洋Well-beingプロジェクトは、課外活動を「女性のこころと体」「社会的なつながり」「食と農」の3つの活動に分類。写真は、「女性のこころと体」のピンクリボンイベント活動
学生が携わりたい活動を見つけやすくするため、2025年度からは「和洋Well-beingプロジェクト」もスタートさせた。課外活動を「女性の健康」「食と農」「地域活動」といった3つのテーマで分類。各活動を連携させて学内の「well-being」を推進したり、実現させた「well-being」を地域に共有したりすることをめざしている。今後も地域との連携をさらに深め、学生たちの活躍の場を創出していく方針だ。
「社会をよりよく、暮らしやすい状態にするには、まず自分自身がウェルビーイングな状態になる必要があります。そういった意味でも、本学の建学の精神は今の社会にも必要とされていると実感しています」
「好き」を見つけ、それを深める過程で自信が高まり、ウェルビーイングな人生につながっていく。和洋女子大学で伸び伸びと過ごす4年間は、学生たちの未来を切り拓く力になるだろう。

和洋女子大学
熊谷優子 学長
東京大学農学生命研究科獣医学博士課程修了 博士(獣医学)
2009年4月~2011年3月 厚生労働省食品安全部食中毒被害情報管理室長
2012年4月~2015年3月 厚生労働省横浜検疫所中央情報管理官
2015年4月~2019年3月 国立感染症研究所国際協力室長
2019年4月~現在 和洋女子大学家政学部(学部長)
2026年4月~ 同大学学長
