
多様な学生と、現場につながる研究
KCGIには、プログラミングなどの情報科目を学びたい学生、日本のアニメや漫画・映画への愛着から来日した留学生、自分の業務にITを取り込もうとする社会人など、多様なバックグラウンドを持つ学生が集まる。学生の多様性は研究テーマの広がりにも直結しており、ITの可能性をさまざまな角度から引き出す土壌となっている。
近年の学生研究の一例として、AIを用いて不登校やいじめの相談対応を行うシステムの開発がある。この研究は国内最大のAI学術団体である人工知能学会で発表された。また、楽器演奏の動画を解析して各楽器の音を方向ごとに分離し、立体的なサラウンド音響へ再合成するという研究も同時期に発表されている。「むしろこちらが与えるよりも、自分の経験や趣味をもとにまず考えてみましょうということで、できるだけ学生に考えさせるようにしています」と中口教授は言う。
設備面でも先進的な環境が整っている。各教室には対面授業とライブ配信を同時に行う「ハイフレックス型授業」対応の大型モニターが設置され、AI研究に不可欠な高性能GPU搭載サーバーも学生に開放されている。履修登録から課題提出までをオンラインで完結するLMS(学習管理システム)も整備されており、学びの環境としての充実度は高い。
講義室の外で育む創造性「未来環境ラボ」
「未来環境ラボ」は、通常の講義カリキュラムを補完する産学連携の実践拠点だ。2017年、KCGグループとBIPROGY株式会社(旧・日本ユニシス)総合技術研究所との産学連携協定締結を機に学内に開設された。BIPROGY社の第一線の研究員と学生が共同プロジェクトを推進する場であり、特別講義やワークショップ、ハッカソンなども実施している。
近年は、大手物流企業の課題をITで解決するグループワークや、ChatGPT登場直後に実施した「生成AIを実務でどう活かすか」をテーマとしたワークショップなど、社会の動きに即応した短期集中型のプロジェクトを継続的に展開している。参加学生はグループに分かれ、短期間で議論し、成果やアイデアを発表するというプロセスを経験する。「答えのない課題」に取り組むことで、社会に出た後の実践的な問題解決力が自然と磨かれていく。
また、2025年10月には京都大学フィールド科学教育研究センター(フィールド研)との連携協定を締結し、山中などでのフィールドワークをITの観点からサポートする取り組みなども始まった。学生がフィールド研の試験地を訪れ、デスクの前だけでは得られない「ITが実際の現場に接続される瞬間」を体験できる機会も生まれている。
与えられた問題を解く力は、もはや十分条件ではない。何が問題かを自ら発見し、仮説を立て、仲間と議論して解決策を形にする——そのプロセスを在学中から繰り返すことが、次の時代を切り拓く力を育む。
30年前、MITのラボのスクリーンに映し出された情報に衝撃を受けた学生がいた。その衝撃が、一人のエンジニアを研究者へ、そして教育者へと導いた。時代は変わり、今日も世界のどこかで、新しい技術に初めて触れた誰かが「これは世界を変える」と感じている。その直感を力に変え、技術とビジネスの両輪で社会に踏み出す——KCGIはそのための場所だ。

京都情報大学院大学
中口孝雄 教授
京都コンピュータ学院を卒業後、ソフトウェアエンジニアとして10年のキャリアを積み、京都情報大学院大学一期生として入学。修士号取得後も研究への志向を深め、2017年に京都大学大学院にて博士(情報学)を取得した。ATR国際電気通信基礎技術研究所客員研究員、NTTアドバンステクノロジ主査など産学にわたる豊富な経歴を持つ。現在は京都情報大学院大学でウェブシステム開発の専門分野を担当するとともに、産学連携プロジェクト「未来環境ラボ」を通じて、学生の実践的な創造活動を支援している。専門はサービスコンピューティング・Webサービス。
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