学科試験の結果のみで合否判定する、総合型選抜、学校推薦型選抜のいわゆる学力型年内入試は、ここ2年ほど大学入試における大きな関心事と言えるでしょう。毎年のように年内入試のルールが変わるため、受験する生徒たちにとっては大きな関心事ですが、試験を実施する大学にとっても、制度設定、実施実務の面からも、極めて大きな関心事です。来年、2027年度入試では、経過措置はあるものの、総合型選抜・学校推薦型選抜で面接が必須化されました。この新ルールによって予定していた入試実施を取りやめたり、入試方法を変更したりする大学が出るほど大きな影響が出ています。

 

年内入試における「面接必須化」とは

 当コラムの読者であれば、「面接必須化」の経緯などの詳しいご説明は不要と思われますが、簡単に振り返っておきたいと思います。総合型選抜・学校推薦型選抜と聞けば、面接が課せられることが一般的ですが、中部地区以西の一部の私立大では、すでに少なくとも40年以上前から、面接が課されず学科試験のみで合否判定する学校推薦型選抜が行われてきました(併願も可)。

 そのため、取り分け近畿地区で一般選抜を目指す受験生からは、年内に合格大学を確保する手段として、広く活用されてきました。このまま何もなければ平穏だったのですが、首都圏でも同様の入試を行う大規模私立大が出てきました。2025年度入試のことです。

 それが問題視されたことで、2026年度入試から入試のルールブックに当たる「令和8年度大学入学者選抜実施要項」の一部が変更されました。それは2月1日以前に学力試験を実施する場合は、学力試験だけではなく「小論文・面接・実技検査等」または「受験生本人が記載する資料や高等学校に記載を求める資料等」(主に活動報告書や志望理由書を想定)を必ず組み合わせる事とされたのです。

 このまま新ルール通りに素直に入試が実施されれば平穏だったのですが、必ず組み合わせる事とされた書類関係の配点がなされなかったり(出願条件だが点数化されない等)、極めて低い配点だったりして、実質的には学力試験のみで合否判定していることと等しいケースが見られました。そもそも入試のルールブックとされている入学者選抜実施要項は法律ではなく「通知」ですので、紳士協定のようなものなのですが、大学としてはいつまでも紳士的ではいられないぐらい厳しい環境にあると見ることもできます。ただ、高校側から見れば一般選抜の前倒しにしか見えないのですが、各種調査を見ると、従来からそれが受験の常識だった近畿地区の高校だけはこうした入試に肯定的なようです。

 このように2026年度入試の新ルールが骨抜きになったことから、2027年度入試のルールブック「令和9年度大学入学者選抜実施要項」(以下、実施要項)に「総合型選抜及び学校推薦型選抜の趣旨に鑑み、面接による評価を必ず行う」と追記されました。これが年内入試での面接必須化です。なお、2026年度入試で既に実施していた大学は2029年度入試までの猶予期間があります。

実施要項の「面接」にはカッコ書きなどがある

 2027年度入試用の実施要項は、昨年より入試方法についての記述量が増え、各入試方法の定義が詳しくなっています。面接についてもカッコ書きで「ディベート、集団討論、プレゼンテーション、口頭試問を含む。オンラインによる実施を含む」と記載されています。また、面接と言っても、単なる面接ではなく「志望する学問分野に対する意欲や適性等に係る面接」と定義されています。ただ、複数の方法を示したことで、考えようによっては、各大学の創意工夫によって多様な形態で実施されることを許容する内容とも受け取れます。

 これによって例えばオンラインでプレゼンテーションした結果をもって面接を実施したと拡大解釈することもできなくもありません。国立大学の中には総合型選抜の提出書類の中に3分以内の自己PR動画の提出を求める大学もありますので、出願時にプレゼンテーション動画を提出してもらい、それを評価対象とすることとして、あとは今まで通り学力型年内入試を実施することもアイディアとしてはあり得ます。ただ、この方法はある大学が文部科学省に確認したところ、面接と認められなかったという話も聞いています(真偽は不明です)。

 また、実施要項では、学校推薦型選抜の場合、「面接の要否」を大学が判断できるとも記載されています。それには「高等学校との緊密な連携により、意欲や適性等を含め丁寧なマッチングが図られていると考えられる非公募型の学校推薦型選抜であって合格した場合には入学することを入学志願者が確約して受験するもの」との条件付きです。指定校推薦や付属校推薦などが念頭にあると思いますが、この一文は大学側の自由な解釈を阻む絶妙な一手です。

 実は過去を振り返っても、学校推薦型選抜は2度にわたって大きなルール改正がありました。一つは1995年度入試から行われた「学力検査の免除を徹底する」、「出願受付を11月1日以降とする」、「募集人員は附属高校を除き、大学は3割、短大は5割を超えないこととする」の3つの新ルールです。この頃すでに学力型年内入試は問題になっていたのですが、各私立大の創意工夫によって、それが今でも続いているのです。もう一つは2000年度入試から「募集人員は附属高校を含み、大学は5割を超えないこと、短大は各短大で適切に定める」というルールが定められたことです。大学にとっては規制ですが短大には規制緩和になっています。

私立大による創意工夫の余地はもう残されていない?

 これまで過去2度にわたる新ルールを乗り切ってきた私立大ですが、さすがに今回の面接必須化には打開策がないように見えます(それを狙った新ルールなので当然ですが)。さらに今回は配点についても、学力試験(実施要項では、教科・科目に係る個別テスト)に偏らないように「他の評価方法との間でバランスの取れた配分で判定に活用する」と記載されています。こうしてみると、実施要項の随所にクサビが打ち込まれていて、かなり完成度の高い実施要項になっています。

 ただ、配点について言えば、学力試験と面接・書類を同じ点数配分にしたとしても、例えば面接・書類は、出願者の意欲に鑑みて、全員を満点にすれば良いのです。そうすれば実質的には学力試験で合否を決めていることになります。やや大人気ない方法ですが、そうなると大学にとっての課題は面接になります。

 近年は指定校よりもやや関係の深い、系列校(係属校)や連携校(高大連携、教育連携・提携など)が増えつつあります。これらの高校だけを対象に学校推薦型選抜を実施すれば「非公募型」と言えるのではないでしょうか。また、「合格した場合には入学することを入学志願者が確約」したとしても特別な事情があって入学を辞退する場合には、当該入試に限って入学金を全額返還すれば、昨今の社会的な要請に応えることにもなります。そう言えば、かつて日本中の全ての高校を指定校とした大学がありましたが、それも一つの見識かも知れません。

 さらに言えば、面接を実施するとしても出願後ではなく面接の事前実施も考えられます。その後、出願するか否かは受験生が決めれば良いのです。また、アメリカの大学のように、卒業生など大学の代理人が面接を行うケースなども考えられます。ただ、ここまでいくと入学者選抜の本来の趣旨から離れて行ってしまいますので、この辺りまでとしておきます。

 ところで、面接を課さない学校推薦型選抜は国公立大学でも行われています。多くは大学入学共通テストを課して、あとは書類による選考なのですが、調べてみると志願者数が100人を超える募集区分も多々見受けられます(2026年度で志願者数が200人を超える看護系学科もありました)。今回の新ルールは恐らく私立大の状況だけを見て決められていると思いますが、実は国公立大にとっても痛みを伴うルール改正だったのです(面接対策を担う高校の先生方は言わずもがなですが)。

神戸 悟(教育ジャーナリスト)

教育ジャーナリスト/大学入試ライター・リサーチャー
1985年、河合塾入職後、20年以上にわたり、大学入試情報の収集・発信業務に従事、月刊誌「Guideline」の編集も担当。
2007年に河合塾を退職後、都内大学で合否判定や入試制度設計などの入試業務に従事し、学生募集広報業務も担当。
2015年に大学を退職後、朝日新聞出版「大学ランキング」、河合塾「Guideline」などでライター、エディターを務め、日本経済新聞、毎日新聞系の媒体などにも寄稿。その後、国立研究開発法人を経て、2016年より大学の様々な課題を支援するコンサルティングを行っている。KEIアドバンス(河合塾グループ)で入試データを活用したシミュレーションや市場動向調査等を行うほか、将来構想・中期計画策定、新学部設置、入試制度設計の支援なども行なっている。
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