国立がん研究センターと京都大学は、悪性度が高く乳児に多いMLL遺伝子変異を伴う急性白血病について、がん化を引き起こすメカニズムを分子レベルで解明し、分子標的薬2剤による併用療法で高い抗腫瘍効果が期待できることを実験的に証明した。成果は米国科学雑誌「The Journal of Clinical Investigation」に掲載される。

 急性白血病は、白血球の成長途中の幼若な段階で遺伝子異常が起こり、がん化した細胞が無制限に増殖して発症する。MLL遺伝子に変異を持つタイプは、急性白血病症例全体の5~10%でみられ、特に乳児の急性リンパ性白血病に多い。生存率は約40%と極めて低い。分子レベルのメカニズムが未解明のため有効な治療法がなかった。

 今回研究チームはクロマチン免疫沈降法を用いて、MLL変異体タンパク質とその結合タンパク質(AF4、DOT1L)が局在するゲノム領域を同定。さらにマウスを用いて、MLL変異体タンパク質が結合タンパク質を介して遺伝子の異常な活性化を引き起こしていることが判明。働きの異なるAF4とDOT1Lが相補的に働いて遺伝子の発現を強く活性化し、がん化が引き起こされることが分かった。

 この成果を基に、それぞれAF4とDOT1Lの活性を阻害するMLL複合体形成阻害剤とDOT1L酵素活性阻害剤の併用について検討。単剤ではあまり効果のない低濃度でも2剤を併用すると、MLL白血病細胞の増殖を効率的に阻害し、分化を誘導した。また、3日間2剤に暴露させた白血病細胞をマウスの体内に移植してもほとんど白血病を起こさなかった。これにより、AF4とDOT1Lの活性を同時に阻害すると高い抗腫瘍効果があることが確認された。

 将来的にこの二つの分子標的薬の併用療法が有効な治療法として確立され、治療に役立つことが期待される。

論文情報:【The Journal of Clinical Investigation】Cooperative gene activation by AF4 and DOT1L drives MLL-rearranged leukemia

京都大学

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